統計検定に取り組むにあたって「数学」の学び直しが必要であるケースが多いと思われるので、「抑えておきたい数学」に関して目標別に取りまとめを行います。高校レベルの数学のトピックが多いですが、全て取り扱うと多いので、「統計学でよく用いられるトピック」を中心に取捨選択を行いました。
指針に関しては下記に取りまとめを行いましたので、下記も合わせてご確認ください。
https://www.hello-statisticians.com/loadmap1
基礎の確認
展開・因数分解の公式
・$(A+B)^2 = A^2+2AB+B^2$
・$(A-B)^2 = A^2-2AB+B^2$
・$(A+B)^3 = A^3+3A^2B+3AB^2+B^3$
・$(A-B)^3=A^3-3A^2B+3AB^2-B^3$
・$(A+B+C)^2=A^2+B^2+C^2+2AB+2BC+2CA$
・$(A-B)(A^2+AB+B^2)=A^3-B^3$
・$(A+B)(A^2-AB+B^2)=A^3+B^3$
・$\displaystyle (A+B)^n = \sum_{k=0}^{n} {}_{n} C_{k} A^{n-k}B^{k}$
関数
・関数の基本
・$1$次関数、$2$次関数
・平方完成 → 「正規分布のベイズ推定」などで頻出
・指数関数の定義
・$a^{x}a^{y}=a^{x+y}$
・$(a^{x})^{n}=a^{nx}$
・対数関数の定義
・$\log{xy}=\log{x}+\log{y}$
・$\log{x^{n}} = n \log{x}$
・対数の底の変換公式
・三角関数の加法定理の直感的理解
集合・組み合わせ・確率
数列
・数列の表記 一般項、漸化式
・等差数列
・等比数列
・等差数列の和
・等比数列の和
・$\displaystyle \sum$の定義と使い方
・$\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^2, \sum_{k=1}^{n} k^3$の公式とその導出*
微積分基礎
・微分の定義式
・多項式関数の微分
・微分と関数の最小値、最大値
・積分の定義と解釈
・多項式関数の積分
・積分と面積
ベクトル・行列
・ベクトルの成分表示
・ベクトルの加減
・ベクトルのスカラー積
・ベクトルの内積 →「ベクトル・行列を用いた回帰の表現」などで出てくる
・ベクトルの類似度と内積 → 「Transformer」などで出てくる
・行列の積 → 頻出
統計検定準$1$級
以下、難しいトピックには「*」をつけた。
ベクトル・行列・線形代数
・$2 \times 2$行列の行列式 → $2$次元正規分布の確率密度関数や$2$変数関数の変数変換の際のヤコビアンの計算で出てくる
・$2 \times 2$行列の逆行列の公式 → 頻出
・転置行列の定義 → 頻出
・転置に関する公式$(AB)^{\mathrm{T}}=B^{\mathrm{T}}A^{\mathrm{T}}$ → 「正規方程式」によく出てくる
・固有値、固有ベクトル → 「主成分分析」などで用いる
・直交行列 → 「マルコフ連鎖における行列の対角化」や「多次元正規分布の理解*」などで出てくる
・行列の対角化 → 「マルコフ連鎖における行列の対角化」などで出てくる
・行列の$n$乗 → 「マルコフ連鎖における行列の対角化」などで出てくる
微分法
・積の導関数 → 頻出
・商の導関数 → 「フィッシャーの線形判別の導出」で用いる
・合成関数の導関数 → 「ロジスティック回帰の勾配の計算」、「ポアソン回帰の勾配の計算」でよく出てくる
・ネイピア数$e$の定義 → 指数関数の導関数、対数関数の導関数の導出の際に用いる、検定などでは出題されないが抑えておくことで導出が追いやすくなる
・指数関数の導関数 → 頻出
・対数関数の導関数 → 対数尤度を用いた最尤法でよく出てくる
・スカラー関数のベクトルでの微分の公式 → 最小二乗法や最尤法の式を行列表記で行なった際の勾配の計算で頻出
積分法
・変数変換と置換積分 → 確率変数の変数変換の理解にあたって重要
テイラー展開・マクローリン展開
・マクローリン展開 → 「モーメント母関数」に対応
・テイラー展開 → 「デルタ法の導出」で用いる
・$e^x$のマクローリン展開 → 「ポアソン分布の確率の和・期待値・確率母関数などの計算」で使用
・$\sin{x}$のマクローリン展開*
・$\displaystyle \frac{1}{(1-x)^2} = \sum_{n=1}^{\infty} nx^{n-1}$の導出 → 「幾何分布の期待値・分散の計算」などで使用
その他
・集合の表記を用いたベクトル、行列の定義 → 式の定義で頻出
・数式と領域 → 「制約あり最適化に用いるラグランジュの未定乗数法の直感的理解」
・$\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^2 = \frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)$の導出 → 「スピアマンの順位相関係数の導出」で用いる
・極限$\displaystyle \lim_{n \to \infty}$の理解 → 「マルコフ連鎖における定常分布」などで使用
・$\displaystyle \prod$と$\log$ → 「最尤法における対数尤度の計算」で使用
統計検定$1$級 統計数理
積分法
統計検定$1$級 統計応用
その他抑えておくと良い数Ⅲ〜大学教養レベルの数学
関数
極限
・ロピタルの定理
・漸近展開を用いた極限値の計算
・ランダウの記号、ランダウの漸近記法
複素数
・複素数の定義
・分母の複素数の消去
・極形式
・極形式の積
・オイラーの公式
・ド・モアブルの定理
微分法
・$C^{n}$級
・双曲線関数の微分
・ロルの定理を用いたテイラーの定理の証明
・有限マクローリン展開
・有限マクローリン展開による近似と近似誤差
・微分作用素
・接平面の方程式
・$2$次の偏導関数
・$F(x,y)=0$の接線の方程式
・多変数関数の合成関数の微分
積分法
・曲線の長さの計算
・広義積分の定義と極限値の計算
・広義積分の収束判定と発散
・ウォリス積分による$\displaystyle \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \cos^{n}{x} dx = \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \sin^{n}{x} dx$の計算
・三角関数の定積分とベータ関数
・長方形領域における累次積分
・曲線間領域における累次積分
・累次積分の順序入れ替え
・変数変換を用いた重積分の計算
級数
微分方程式
線形代数
・行列の階段形
・行列の簡約階段形
・$n$次正方行列の行列式
・余因子展開
・余因子展開を用いた固有値の計算
・ベクトル空間、部分空間
・標準内積
・随伴行列
・エルミート行列
・ユニタリ行列
・ベクトルの外積
The Matrix Cookbook
https://www.math.uwaterloo.ca/~hwolkowi/matrixcookbook.pdf