ユニタリ行列(Unitary matrix)の定義とユニタリ行列の性質

ユニタリ行列(Unitary matrix)は転置行列と逆行列が一致する直交行列に複素数(Complex Number)の取り扱いを加えて拡張した行列です。当記事では直行行列とユニタリ行列の定義と性質に関して演習などを通して具体的に取りまとめを行いました。
作成にあたっては、「チャート式シリーズ 大学教養 線形代数」の第$7$章「内積」を主に参考にしました。

・数学まとめ
https://www.hello-statisticians.com/math_basic

ユニタリ行列の概要

直交行列

行列$A$が直交行列であるとき、直交行列の転置$A^{\mathrm{T}}$と単位行列$I$に関して下記が成立する。
$$
\large
\begin{align}
A A^{\mathrm{T}} = A^{\mathrm{T}} A = I
\end{align}
$$

上記より直交行列$A$に関して$A^{\mathrm{T}}=A^{-1}$も成立する。直交行列は下記のように多次元正規分布における$\exp$の内側に出てくる二次形式の解釈などに出てくるので抑えておくとよい。

随伴行列

複素数を成分に持つ行列$A$に関して随伴行列(Adjoint matrix)は$A = \overline{A^{\mathrm{T}}}$のように定められる。$A=(a_{ij})$のように表記するなら共役な複素数を元に$A^{*}=(\overline{a_{ji}})$のように表せる。詳しくは下記で取り扱った。

ユニタリ行列の定義

行列$A$がユニタリ行列であるとき、ユニタリ行列の随伴行列$A^{*}$と単位行列$I$に関して下記が成立する。
$$
\large
\begin{align} A A^{*} = A^{*} A = I
\end{align}
$$

上記より$A^{*}=A^{-1}$も同時に成立する。

ユニタリ行列の性質

以下、「チャート式シリーズ 大学教養 線形代数」の例題の確認を行う。

重要例題$074$

・$(1)$
$[1]$
単位行列$I$に関して$I^{*}=I$が成立する。よって$I^{*}I=I$が成立するので単位行列はユニタリ行列である。

$[2]$
ユニタリ行列$U$と$V$を考えるとそれぞれ$U^{*}=U^{-1}, V^{*}=V^{-1}$が成立する。よって下記が成り立つ。
$$
\large
\begin{align}
(UV)^{*} = V^{*}U^{*} = V^{-1}U^{-1} = (UV)^{-1}
\end{align}
$$

$(UV)^{*} = (UV)^{-1}$が成立するので$UV$はユニタリ行列である。

$[3]$
ユニタリ行列$U$を考えると$U^{-1}$が成立する。このとき下記が成り立つ。
$$
\large
\begin{align}
(U^{-1})^{*} = (U^{*})^{*} = U = (U^{-1})^{-1}
\end{align}
$$

$(U^{-1})^{*} = (U^{-1})^{-1}$が成立するので$U^{-1}$はユニタリ行列である。

$[2]$
直交行列$U$と$V$を考えるとそれぞれ$U^{\mathrm{T}}=U^{-1}, V^{\mathrm{T}}=V^{-1}$が成立する。よって下記が成り立つ。
$$
\large
\begin{align}
(UV)^{\mathrm{T}} = V^{\mathrm{T}}U^{\mathrm{T}} = V^{-1}U^{-1} = (UV)^{-1}
\end{align}
$$

$(UV)^{\mathrm{T}} = (UV)^{-1}$が成立するので$UV$は直交行列である。

$[3]$
直交行列$U$を考えると$U^{-1}$が成立する。このとき下記が成り立つ。
$$
\large
\begin{align}
(U^{-1})^{\mathrm{T}} = (U^{\mathrm{T}})^{\mathrm{T}} = U = (U^{-1})^{-1}
\end{align}
$$

$(U^{-1})^{\mathrm{T}} = (U^{-1})^{-1}$が成立するので$U^{-1}$は直交行列である。

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