複素数を成分に持つ行列に対し、転置と複素共役を考えた行列を随伴行列(Adjoint matrix)といいます。随伴行列はエルミート行列(Hermitian matrix)の定義などの際にも用いられます。当記事では随伴行列の定義と性質に関して取りまとめを行いました。
作成にあたっては「チャート式シリーズ 大学教養 線形代数」の第$7$章の「内積」を主に参考にしました。
・数学まとめ
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Contents
随伴行列の定義
複素数を成分に持つ行列$A$に関して随伴行列(Adjoint matrix)を$A = \overline{A^{\mathrm{T}}}$のように定める。$A=(a_{ij})$のように表記するなら$A^{*}=(\overline{a_{ji}})$のように表せる。
随伴行列の性質
以下、「チャート式シリーズ 大学教養 線形代数」の例題の確認を行う。
基本例題$143.(1)$
行列$A$の各要素の複素共役を取った行列を$\overline{A}$と表す。このとき、複素共役と転置の交換が可能であることから$\overline{A}^{\mathrm{T}}=\overline{A^{\mathrm{T}}}$が成立する。よって$A^{*}=\overline{A^{\mathrm{T}}}$に関して下記のように考えることができる。
$$
\large
\begin{align} (A^{*})^{*} &= \overline{(A^{*})^{\mathrm{T}}} = \overline{(\overline{A^{\mathrm{T}}})^{\mathrm{T}}} \\
&= \overline{\overline{(A^{\mathrm{T}})^{\mathrm{T}}}} = A
\end{align}
$$
上記より、$(A^{*})^{*}=A$が成り立つ。
基本例題$143.(2)$
$A=(a_{ij}), B=(b_{ij})$とおく。このとき$(A+B)^{*}$の$(i,j)$成分の$((A+B)^{*})_{ij}$は下記のように表せる。
$$
\large
\begin{align}
((A+B)^{*})_{ij} &= \overline{a_{ji}+b_{ji}} \\
&= \overline{a_{ji}} + \overline{b_{ji}} \\
&= (A^{*})_{ij} + (B^{*})_{ij}
\end{align}
$$
上記より、$(A+B)^{*}=A^{*}+B^{*}$が成立する。
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