複素数(Complex Number)の基本事項まとめ 〜1. 導入〜

複素数は$a+bi$のように実部(Real part)と虚部(Imaginary part)によって表される数であり、統計学に限らず様々な応用があります。当記事では複素数の基本事項を学べるように複素数の定義や分数や三角関数の基本演算について取り扱いを行いました。

・数学まとめ
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複素数の定義

まずは方程式 $x^2+1=0$ を考えます。この方程式は実数解はもちませんが、$x=\pm \sqrt{-1}$ という解を定義すれば、解があると言えます。ここで、$$\sqrt{-1}=i$$ と定義し、これを虚数単位と呼びます。

複素数とは $2$ つの実数 $a, b$ を用いて、$a+bi$ と表せるもののことです。$a$を実部(Real part)、$b$を虚部(Imaginary part)と呼びます。ある複素数 $z$ に対して、実部と虚部をそれぞれ $Re(z), Im(z)$ と表します。特に、$Re(z)=0$のものを純虚数と呼びます。複素数に対する計算の規則について見ていきましょう。以下では、$c,d,k \in \mathbb{R}$ とします。

$(1)\, (a+bi)+(c+di)=(a+c)+(b+d)i$

$(2)\, (a+bi)-(c+di)=(a-c)+(b-d)i$

$(3)\, k(a+bi)=ka+kbi$

$(4)\, (a+bi)(c+di)=ac+adi+bci+bdi^2=ac-bd+(ad+bc)i$

$(3)$において、$k=0, a=0, b=1$ とすると、$0i=0$が得られます。 実部同士、虚部同士で計算する点に注意です。また、$a+bi=0 \Rightarrow a=0 \land b=0 $ とします。

複素数が分母にあるとき

例えば、複素数 $a_i, b_i \in \mathbb{R} に対し z_n = a_n+b_ni \, (n=1,2,3)$ のとき、$$z_1 + \frac{z_2}{z_3}=a_1+b_1i+\frac{a_2+b_2i}{a_3+b_3i}$$ は分母に虚数単位があるため、このままでは計算できません。

対処するためには、$\displaystyle\frac{1}{1+\sqrt{2}}$ のような数の分母の有理化と似た操作を行います。展開公式 $(A-B)(A+B)=A^2-B^2$ を使うというものです。ただし、今は虚数単位があるため、$(a+bi)(a-bi)=a^2+b^2$となることに要注意です。

$$
\large
\begin{align}
\frac{a_2+b_2i}{a_3+b_3i} &= \frac{(a_2+b_2i)(a_3-b_3i)}{(a_3+b_3i)(a_3-b_3i)} \\
&= \frac{(a_2+b_2i)(a_3-b_3i)}{a^2_3+b^2_3} \\
&= \frac{a_2a_3-b_2b_3+(a_3b_2-a_2b_3)i}{a^2_3+b^2_3}
\end{align}
$$

このように分母の虚数単位を取り除くことができます。

極座標表示

複素数 $z=x+yi$ を極座標によって表現することを考えます。極座標とは、以下の変換です。
$y=r\sin{\theta}, r>0 , \theta \in \mathbb{R}$
これにより、$z=x+yi=r(\cos{\theta}+i\sin{\theta})$と表すことができます。

では、$z_1=r_1(\cos{\theta_1}+i\sin{\theta_1}), z_2=r_2(\cos{\theta_2}+i\sin{\theta_2})$として、$z_1z_2$を計算してみましょう。
$$
\large
\begin{align}
z_1z_2 &= r_1r_2(\cos{\theta_1}+i\sin{\theta_1})(\cos{\theta_2}+i\sin{\theta_2}) \\
&= r_1r_2(\cos{\theta_1} \cos{\theta_2} – \sin{\theta_1} \sin{\theta_2} + i\sin{\theta_1} \cos{\theta_2} + i \cos{\theta_1} \sin{\theta_2}) \\
&= r_1r_2(\cos{(\theta_1+\theta_2)}+i\sin{(\theta_1+\theta_2)})
\end{align}
$$

途中で三角関数の加法定理を用いました。極座標表示では綺麗な形で積を書けます。

また、$\displaystyle \frac{z_1}{z_2}=\frac{r_1}{r_2}(\cos{(\theta_1-\theta_2)}+i\sin{(\theta_1-\theta_2)})$が成り立ちます。