固有多項式(characteristic polynomial)は固有値を計算する際の固有方程式に用いられる多項式です。当記事ではブロック対角行列(block-diagonal matrix)の行列式の計算と、固有多項式の計算について取り扱いました。
作成にあたっては「チャート式シリーズ 大学教養 線形代数」の第$8$章「固有値問題と行列の対角化」を主に参考にしました。
・数学まとめ
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ブロック対角行列の固有多項式
ブロック行列の行列式
$$
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\begin{align}
X = \left( \begin{array}{cc} A & B \\ O & D \end{array} \right)
\end{align}
$$
上記のように定義した$X$の行列式$\det{(X)}$について下記が成立する。
$$
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\begin{align}
\det{(X)} = \left| \begin{array}{cc} A & B \\ O & D \end{array} \right| = |A||D| = \det{(A)}\det{(D)} \quad (1)
\end{align}
$$
固有多項式の定義
$n$次正方行列$A$の固有多項式$F_{A}(t)$は$F_{A}(t)=\det{(tI_{n} \, – \, A)}$のように定義される。固有多項式の定義は下記でも取り扱った。
ブロック対角行列の固有多項式
次節の基本例題$156$で取り扱った。
計算例
以下、「チャート式シリーズ 大学教養 線形代数」の例題の確認を行う。
基本例題$156$
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\begin{align}
A = \left( \begin{array}{cccc} A_1 & O & \cdots & O \\ O & A_2 & \cdots & O \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ O & O & \cdots & A_r \end{array} \right)
\end{align}
$$
上記のブロック対角行列$A$に対し、$(1)$式を繰り返し適用することで下記のように固有方程式$F_{A}(t)$を得ることができる。
$$
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\begin{align}
F_{A}(t) &= \left| \begin{array}{cccc} t I_1 \, – \, A_1 & O & \cdots & O \\ O & t I_2 \, – \, A_2 & \cdots & O \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ O & O & \cdots & t I_r \, – \, A_r \end{array} \right| \\
&= \det{(t I_1 \, – \, A_1)} \left| \begin{array}{cccc} t I_2 \, – \, A_2 & \cdots & O \\ \vdots & \ddots & \vdots \\ O & \cdots & t I_r \, – \, A_r \end{array} \right| \\
&= \cdots \\
&= \det{(t I_1 \, – \, A_1)} \cdots \det{(t I_r \, – \, A_r)} \\
&= F_{A_1}(t) \cdots F_{A_r}(t)
\end{align}
$$
上記より、ブロック対角行列$A$の固有多項式について下記が成立する。
$$
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\begin{align}
F_{A}(t) = F_{A_1}(t) \cdots F_{A_r}(t)
\end{align}
$$