統計学を学ぶにあたって最低限抑えておきたい数学 〜数列の表記:一般項・漸化式〜

当記事では「統計学を学ぶにあたって最低限抑えておきたい数学」の中から「数列の表記」に関して取り扱います。数列を理解するにあたっては、「要素の列挙」、「一般項」、「漸化式」の主に$3$パターンがあり、それぞれの対応や使い分けを把握するとスムーズだと思います。
取りまとめにあたっては数学の解説に関してはなるべくシンプルに取り扱いますが、統計学への応用に関連した複雑な内容に関しては目次に「*」をつけました。「*」がついているものはやや難しいので、読み飛ばしても問題ありません。

・基本数学まとめ
https://www.hello-statisticians.com/math_basic

数列の表記法

数列を理解するにあたっては、「数列」:「数の並びを何らかの表記を用いて表したもの」のように理解すると良いです。「一般項」や「漸化式」のような表記が難しく見える場合もあるかもしれませんが、「数の並びを表す」という目的に基づいて理解すればそれほど難しくないのではないかと思います。

以下、数列の表記の$3$パターンの解説を行うにあたって、「要素の列挙」、「一般項」、「漸化式」の$3$パターンについてそれぞれ確認を行います。

要素の列挙

数列を表すにあたって最も直感的な表記法が「要素の列挙」です。たとえば、下記のように要素を列挙することで数列を表すことができます。
$$
\large
\begin{align}
& \{ 1, 2, 3, 4, 5, …, 100, … \} \\
& \{ 1, 3, 5, 7, 9 \} \\
& \{ a_1, a_2, …, a_n \}
\end{align}
$$

上記で表したように${ 1, 2, 3, , 4, 5, …, 100, … }$や${ 1, 3, 5, 7, 9 }$のように単に数を列挙する場合もあれば、$n$番目の項を$a_n$のようにおいて表す場合もあります。

$a_n$のような表記は次項と次々項で取り扱う「一般項」と「漸化式」でも出てくるので重要です。

一般項

「一般項」は$n$番目の項$a_n$を$n$の式で表す表記です。ここでの$n$は関数$f(x)$と対応していると考えることができますが、$x$が実数値を取るのに対して$n$は自然数であり、$n=1,2,3,…$のように表されることに注意が必要です。

以下具体的に確認するにあたって、「一般項」の式を$3$つ確認します。
$$
\large
\begin{align}
a_n &= n \\
a_n &= 2n – 1 \\
a_n &= 2^n – 1
\end{align}
$$

上記の「一般項」の表記に基づいて$n=1,2,3,4,5,6,7,8$で「要素を列挙」すると下記のように表すことができます。
$$
\large
\begin{align}
& \{ 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8 \} \\
& \{ 1, 3, 5, 7, 9, 11, 13, 15 \} \\
& \{ 1, 3, 7, 15, 31, 63, 127 \}
\end{align}
$$

ここで当然のようで重要なのが、「一般項」は単に「数列を表す表記法」の一つであるということです。数式表記だと難しく見えるかもしれませんが、目的を抑えることでそれほど難しくないというのがわかると思います。

漸化式

漸化式は「隣接する項の関係式」を元に「数列を表す表記法」です。たとえば下記のように「漸化式」を用いた数列が表されます。
$$
\large
\begin{align}
a_{n+1} &= a_{n} + 1, a_{1}=1 \\
a_{n+1} &= a_{n} + 2, a_{1}=1 \\
a_{n+1} &= 2(a_{n}+1) – 1, a_{1}=1
\end{align}
$$

上記の「漸化式」の表記に基づいて$n=1,2,3,4,5,6,7,8$で「要素を列挙」すると下記のように表すことができます。
$$
\large
\begin{align}
& \{ 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8 \} \\
& \{ 1, 3, 5, 7, 9, 11, 13, 15 \} \\
& \{ 1, 3, 7, 15, 31, 63, 127 \}
\end{align}
$$

列挙した要素を確認すると、「一般項」で取り扱ったものと同様の数列が得られることがわかります。詳しい対応の仕組みについては次節の「一般項と漸化式の対応」で取り扱いますので、ここでは「同じ数列を様々な表記で表すことができる」とだけ抑えれば十分です。

ここまでで「要素の列挙」、「一般項」、「漸化式」の三つの「数列の表記法」を確認しましたが、どれも難しく考え過ぎずに単なる「数列の表記法」の一つであると考えることが重要です。

一般項と漸化式

前節で取り扱った「一般項」と「漸化式」はよく用いられるので、以下では抑えておくと良い重要トピックに関して取りまとめます。

等差数列と等比数列

「等差数列」と「等比数列」は様々な分野で「前提の理解」で必要なので抑えておくと良いです。大まかには「隣接する二項の差が一定である数列」を「等差数列」、「隣接する二項の比が一定である数列」を「等比数列」というと理解しておくと良いです。

以下、「等差数列」と「等比数列」に対して具体的に確認します。「要素を列挙」したのちに「一般項」と「漸化式」を用いた表記をそれぞれ確認します。

等差数列

「等差数列」は「隣接する二項の差が一定である数列」であり、具体的には下記のような数列が「等差数列」です。
$$
\large
\begin{align}
& \{ 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, … \} \\
& \{ 1, 3, 5, 7, 9, 11, 13, 15, … \} \\
& \{ 19, 17, 15, 13, 11, 9, 7, … \}
\end{align}
$$

上記を「一般項」の形式で表記すると下記のように表すことができます。
$$
\large
\begin{align}
a_n &= n \\
a_n &= 2n-1 \\
a_n &= -2n + 21
\end{align}
$$

上二つは前節の例を用いましたが、一番下は$-2$ずつ減る「等差数列」を例に用いました。$3$つの数列はそれぞれ$1, 2, -2$ずつ変化しますが、この変化する「差」を「等差数列」の「公差」ということも抑えておくと良いです。

次に漸化式の形式で表記すると下記のように表すことができます。
$$
\large
\begin{align}
a_{n+1} &= a_{n} + 1, a_{1}=1 \\
a_{n+1} &= a_{n} + 2, a_{1}=1 \\
a_{n+1} &= a_{n} – 2, a_{1}=19
\end{align}
$$

等比数列

「等比数列」は「隣接する二項の比が一定である数列」であり、具体的には下記のような数列が「等比数列」です。
$$
\large
\begin{align}
& \{ 1, 2, 4, 8, 16, … \} \\
& \{ 1, 3, 9, 27, 81, … \} \\
& \left\{ 3, 1, \frac{1}{3}, \frac{1}{9}, \frac{1}{27}, … \right\}
\end{align}
$$

上記を「一般項」の形式で表記すると下記のように表すことができます。
$$
\large
\begin{align}
a_n &= 2^{n-1} \\
a_n &= 3^{n-1} \\
a_n &= 3 \times \left( \frac{1}{3} \right)^{n-1}
\end{align}
$$

$3$つの数列はそれぞれ$\displaystyle \times 2, \times 3, \times \frac{1}{3}$ずつ変化しますが、この変化する「比率」を「等比」の「公比」ということも抑えておくと良いです。

次に漸化式の形式で表記すると下記のように表すことができます。
$$
\large
\begin{align}
a_{n+1} &= 2a_{n}, a_{1}=1 \\
a_{n+1} &= 3a_{n}, a_{1}=1 \\
a_{n+1} &= \frac{1}{3}a_{n}, a_{1}=3
\end{align}
$$

一般項と漸化式の対応

ここまでで「一般項」と「漸化式」の表記をいくつか確認しましたが、双方の対応に関してはあまり考えませんでしたが、数学の演習問題などでは「漸化式から一般項を計算する」というのがよく出題されます。

一方で、演習問題などで取り扱われる「漸化式から一般項を計算する」問題などは少々難しいものが多く、実際にはシンプルな数列を元に原理原則だけを抑えておくだけで十分だと思います。ここでは下記の等差数列に関して考えます。
$$
\large
\begin{align}
\{ 1, 3, 5, 7, 9, 11, 13, 15, … \}
\end{align}
$$

上記は初項$1$、交差$2$の等差数列であり、「一般項」の表記では$a_{n}=2n-1$、「漸化式」の表記では$a_{n+1}=a_{n}+2,a_{1}=1$のようにそれぞれ表されます。このような表記にあたっては、「一般項」は「第$n$項を$n$の式で表すにあたって関数と同様に立式する」、「漸化式」は「初項を定めて隣接する項の関係式を作成する」のように考えると良いです。この例では初項$1$、交差$2$の等差数列であるので、$y=2x+b$を元に$x=1$のとき$y=1$であることから$b=-1$を導出することができます。一方で「漸化式」は次の項が前の項の$2$倍であることから$a_{n+1}=2a_{n}$、初項が$1$から$a_{1}=1$のように考えられます。

このように「一般項」は「関数」、「漸化式」は「隣接する$2$項の関係式をどのように作成するか」にだけ着目しておけば基本的な対応については行えると思います。統計学を学ぶ上で必須ではないですが、より詳細の変形などを確認する場合は数Bのチャート式などに取り組むと良いと思います。

数列の統計学への応用

観測値の表記と母集団のパラメータの推定*

勾配法・ニュートン法と漸化式*