行列式と置換③:置換(permutation)の指数法則・単位置換・逆置換

線形代数の枠組みで$n$次正方行列の行列式(determinant)を取り扱うにあたっては置換(permutation)という概念を抑えておく必要があります。当記事では置換(permutation)の指数法則や単位置換、逆置換について取りまとめを行いました。
作成にあたっては「チャート式シリーズ 大学教養 線形代数」の第$4$章「行列式」を主に参考にしました。

・数学まとめ
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置換の指数法則・単位置換・逆置換

置換の指数法則

任意の置換$\sigma$と任意の整数$k, l$について下記が成立する。
$$
\large
\begin{align}
\sigma^{k+l} = \sigma^{k} \sigma^{l}
\end{align}
$$

単位置換

文字$i \in \{ 1, 2, \cdots , n \}$を$i$自身に写す置換を$e$とおくと、$e$は下記のように表される。
$$
\large
\begin{align}
e = \left[ \begin{array}{cccc} 1 & 2 & \cdots & n \\ 1 & 2 & \cdots & n \end{array} \right]
\end{align}
$$

この置換$e$を単位置換という。また、任意の置換$\sigma$について$\sigma^{0}=e$が成立すると定義する。

逆置換

任意の置換$\sigma$について$\sigma \tau = \tau \sigma = e$が成立する置換$\tau$が存在する。この置換$\tau$のことを$\sigma$の逆置換という。

具体的には$12 \cdots n$が$\sigma(1) \sigma(2) \cdots \sigma(n)$のように変換されるとき、$\tau(\sigma(1))=1, \, \tau(\sigma(2))=2, \, \cdots , \, \tau(\sigma(n))=n$が成立するように$\tau$を定めれば良い。

上記のような$\sigma$の逆行列$\tau$は$\tau = \sigma^{-1}$のように表すことができ、指数法則より$\sigma \tau = \sigma^{1} \sigma^{-1} = \sigma^{1-1} = \sigma^{0} = e$のように表すこともできる。

例題の確認

以下、「チャート式シリーズ 大学教養 線形代数」の例題の確認を行う。

基本例題$054$

基本例題$055$

$\tau \sigma (\sigma^{-1} \tau^{-1})$は下記のように式変形することができる。
$$
\large
\begin{align}
\tau \sigma (\sigma^{-1} \tau^{-1}) &= \tau \sigma^{1-1} \tau^{-1} \\
&= \tau \tau^{-1} \\
&= e
\end{align}
$$

同様に$(\sigma^{-1} \tau^{-1}) \tau \sigma$は下記のように式変形できる。
$$
\large
\begin{align}
(\sigma^{-1} \tau^{-1}) \tau \sigma &= \sigma^{-1} \tau^{-1+1} \sigma \\
&= \sigma^{-1} \sigma \\
&= e
\end{align}
$$

上記より$(\tau \sigma) (\sigma^{-1} \tau^{-1}) = (\sigma^{-1} \tau^{-1}) (\tau \sigma)$が成立するので逆置換の定義より、$(\tau \sigma)^{-1} = \sigma^{-1} \tau^{-1}$が成立する。