線形代数の枠組みで$n$次正方行列の行列式(determinant)を取り扱うにあたっては置換(permutation)という概念を抑えておく必要があります。当記事では置換(permutation)の符号や符号に関連する転倒数・偶置換・奇置換について取りまとめを行いました。
作成にあたっては「チャート式シリーズ 大学教養 線形代数」の第$4$章「行列式」を主に参考にしました。
・数学まとめ
https://www.hello-statisticians.com/math_basic
置換の符号
置換の転倒数
$n$個の数字$1, \cdots , n$の置換$\sigma$について、「$i < j, \, i, j \in \{ 1, \cdots , n \}$」かつ「$\sigma(i) > \sigma(j)$」が成立する$(i,j)$の組の個数を置換$\sigma$の転倒数という。
$n$変数の差積と置換の符号
$n$変数$x_{1}, x_{2}, \cdots , x_{n}$の差積$D(x_{1}, x_{2}, \cdots , x_{n})$を下記のように定義する。
$$
\large
\begin{align}
D(x_{1}, x_{2}, \cdots , x_{n}) &= (x_1-x_n) \times \cdots \times (x_1-x_3) \times (x_1-x_2) \\
& \times (x_2-x_n) \times \cdots \times (x_2-x_3) \\
& \times \cdots \\
& \times (x_{n-2}-x_n) \times (x_{n-2}-x_{n-1}) \\
& \times (x_{n-1}-x_n)
\end{align}
$$
ここで$n$個の数字$1, \cdots , n$の置換$\sigma$について、$\sigma$の符号$\mathrm{sgn}{(\sigma)}$を下記のように定義する。
$$
\large
\begin{align}
\mathrm{sgn}{(\sigma)} = \frac{D(x_{\sigma(1)}, x_{\sigma(2)} , \cdots , x_{\sigma(n)})}{D(x_{1}, x_{2}, \cdots , x_{n})}
\end{align}
$$
上記を置換$\sigma$の符号という。$\mathrm{sgn}{(\sigma)}$は置換$\sigma$の転倒数が偶数であるとき$\mathrm{sgn}{(\sigma)}=1$、転倒数が奇数であるとき$\mathrm{sgn}{(\sigma)}=-1$となることも合わせて抑えておくと良い。
偶置換・奇置換
転倒数が偶数・符号が$1$である置換を偶置換、転倒数が奇数・符号が$-1$である置換を奇置換という。
例題の確認
以下、「チャート式シリーズ 大学教養 線形代数」の例題の確認を行う。
基本例題$056$
・$[1]$
$$
\large
\begin{align}
A = \left[ \begin{array}{cccc} 1 & 2 & 3 & 4 \\ 2 & 4 & 3 & 1 \end{array} \right]
\end{align}
$$
$1) \,$ $i=1, \sigma(i)=2$に対し、$i < j, \sigma(i) > \sigma(j)$となるのは$j=4$のみである。
$2) \,$ $i=2, \sigma(i)=4$に対し、$i < j, \sigma(i) > \sigma(j)$となるのは$j=3, 4$である。
$3) \,$ $i=3, \sigma(i)=3$に対し、$i < j, \sigma(i) > \sigma(j)$となるのは$j=4$のみである。
上記より転倒数は$1+2+1=4$であるので、符号は$\mathrm{sgn}(\sigma)=1$である。
・$[2]$
$$
\large
\begin{align}
\sigma = \left[ \begin{array}{ccccc} 1 & 2 & 3 & 4 & 5 \\ 2 & 3 & 5 & 1 & 4 \end{array} \right]
\end{align}
$$
$1) \,$ $i=1, \sigma(i)=2$に対し、$i < j, \sigma(i) > \sigma(j)$となるのは$j=4$のみである。
$2) \,$ $i=2, \sigma(i)=3$に対し、$i < j, \sigma(i) > \sigma(j)$となるのは$j=4$のみである。
$3) \,$ $i=3, \sigma(i)=5$に対し、$i < j, \sigma(i) > \sigma(j)$となるのは$j=4, 5$である。
$4) \,$ $i=4, \sigma(i)=1$に対し、$i < j, \sigma(i) > \sigma(j)$となる$j$は存在しない。
上記より転倒数は$1+1+2+0=4$であるので、符号は$\mathrm{sgn}(\sigma)=1$である。