和を表す$\sum$と積を表す$\prod$の定義と具体的な使い方

和を表す$\displaystyle \sum$と積を表す$\displaystyle \prod$は、$x_1, \cdots x_n$のように$n$個の標本を取り扱うにあたってはよく用いられます。一方で数式の記号が出てくるだけで難しく見えるようなので、当記事ではそれぞれの定義と具体的な使い方に関して取りまとめました。

・数学まとめ
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$\sum$の定義と使用例

$\sum$の定義

$$
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\begin{align}
\sum_{i=1}^{n} x_i = x_1 + x_2 + x_3 + \cdots + x_{n-1} + x_{n}
\end{align}
$$

和を表す$\displaystyle \sum$は上記のように定められる。「$\displaystyle \sum$の公式」で取り扱ったように、公式は複雑な式も取り扱うが、$\displaystyle \sum$自体は単に和をまとめた記号であるのでシンプルに考えると良い。

$\displaystyle \sum$の下に記した$i=1$と上に記した$n$は$i=1$から$i=n$までの和を表すが、省略される場合もあることに注意が必要である。また、集合$J=\{1,2,3,4,5\}$の要素$j$が$j \in J$のように表されることを元に、下記のように表記することもできる。
$$
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\begin{align}
\sum_{j \in J} x_j &= x_1 + x_2 + x_3 + x_4 + x_5 \\
J &= \{ 1,2,3,4,5 \}
\end{align}
$$

$\sum$の使用例

統計学における$\displaystyle \sum$の主な使用例には平均や分散の定義が挙げられる。標本$x_1, \cdots , x_n$が観測された時の標本平均$\bar{x}$と標本分散$S_x^2$は下記のように表される。
$$
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\begin{align}
\bar{x} &= \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} x_i \\
S_x^2 &= \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} (x_i-\bar{x})^2
\end{align}
$$

上記のように$n$個の観測値に対し、何らかの式に基づいて指標を計算する際に$\displaystyle \sum$を用いることで式をシンプルに表すことができる。

$\prod$の定義と使用例

$\prod$の定義

$$
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\begin{align}
\prod_{i=1}^{n} x_i = x_1 \times x_2 \times x_3 \times \cdots \times x_{n-1} \times x_{n}
\end{align}
$$

和を表す$\displaystyle \prod$は上記のように定められる。$\displaystyle \prod$は$\displaystyle \sum$と同様に単に積をまとめた記号であるのでシンプルに考えると良い。

$\prod$の使用例

統計学における$\displaystyle \prod$の主な使用例には最尤法が挙げられる。$f(x_1,x_2)=f(x_1)f(x_2)$が成立する場合に、同時確率密度関数$f(x_1,\cdots,x_n)$は下記のように表される。
$$
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\begin{align}
f(x_1,\cdots,x_n) = \prod_{i=1}^{n} f(x_i)
\end{align}
$$

また、上記の最大値問題を考えるにあたって$\displaystyle \prod$の対数関数を考える場合が多い。$\displaystyle \prod_{i=1}^{n}$の対数は下記のように変形を行うことができる。
$$
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\begin{align}
\log{\left[ \prod_{i=1}^{n} f(x_i) \right]} &= \log{[ f(x_1) \times f(x_2) \times f(x_3) \times \cdots \times f(x_{n-1}) \times f(x_{n})]} \\
&= \log{f(x_1)} + \log{f(x_2)} + \log{f(x_3)} + \cdots + \log{f(x_{n-1})} + \log{f(x_n)} \\
&= \sum_{i=1}^{n} \log{f(x_i)}
\end{align}
$$

最尤法に関する詳しい導出は下記などで演習形式で取り扱った。