数列の和の公式とその導出 〜等差数列の和、等比数列の和、Σの公式 etc〜

数列の和の計算は基本的な数学のトピックである一方で、単に公式を抑えるだけではわからなくなりがちです。そこで当記事では数列の和の公式とその導出に関して取り扱いました。
等差数列・等比数列の和の公式の導出は考え方の理解が中心である一方で、$\displaystyle \sum$に関連する和の導出は二項定理を元に考えるなど少々トリッキーですが、簡単な流れだけでも抑えておくと良いと思います。

・数学まとめ
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等差数列・等比数列の和

等差数列の和

$1,3,5,…$のように、値が同じ数だけ変化する数列を等差数列という。

ここで$n$番目の項を$a_{n}$のように考えたとき、等差数列では$a_1$を初項、$a_{n+1}-a_{n}=d$を公差とそれぞれ考える。$a_1$ではなく$a_0$を初項と考える場合もあるが、これは定義次第なので状況に合わせて考えれば良い。

数列の表記にあたっては「要素を書き下す定義」、「一般項を用いた定義」、「漸化式を用いた定義」の主に$3$通りがあるが、「要素を書き下す定義」が$1,3,5,…$であるとき、「一般項を用いた定義」は$a_{n} = 1 + 2(n-1)$、「漸化式を用いた定義」は$a_{n+1}=a_{n}+2, a_{1}=1$のようにそれぞれ表すことができる。特に「漸化式」が難しいように見えがちだが、「一般項」と同様に単に数列の表記を取り扱うと考えればそれほど難しくない。

ここまでで等差数列の概要に関して確認ができたので、$a_{n} = a + d(n-1)$で表される数列の和$a_{1}+a_{2}+…+a_{n}$を計算することを考える。これを考えるにあたっては$\displaystyle \frac{a_{1}+a_{n}}{2}$が$a_{1},a_{2},…,a_{n}$の平均であることに基づいて考えることでシンプルに考えることができる。$\displaystyle \frac{a_{1}+a_{n}}{2}$が$a_{1},a_{2},…,a_{n}$の平均であるので、$\displaystyle \frac{a_{1}+a_{n}}{2}$に個数をかけることで下記のように等差数列の和を計算することができる。
$$
\large
\begin{align}
a_{1} + a_{2} + … + a_{n} &= \frac{a_{1}+a_{n}}{2} \times n \\
&= \frac{a + a + d(n-1)}{2} \times n \\
&= \frac{n(2a + d(n-1))}{2}
\end{align}
$$

上記が初項$a$、公差$d$の等差数列の和の公式である。

等比数列の和

$1,2,4,8,16,…$のように、次の数が$1$つ前の数の定数倍になる数列を等比数列という。初項$a$、定数倍に対応する公比が$r$の等比数列は$a, ar, ar^2,…$のように表される。

また、「一般項を用いた等比数列の定義」は$a_{n} = ar^{n-1}$、「漸化式を用いた等比数列の定義」は$a_{n+1}=ra_{n}, a_{1}=a$のように表される。以下、この等比数列の和の導出を考える。

等比数列の和の導出にあたっては$S = a_{1}+…+a_{n}$とおき、$S-rS = (1-r)S$を考えればよい。詳細の計算を下記に示す。
$$
\large
\begin{align}
S-rS &= (a_{1}+…+a_{n}) – r(a_{1}+…+a_{n}) \\
&= (a+ar+ar^2+…+ar^{n-1}) – r(a+ar+ar^2+…+ar^{n-1}) \\
&= (a+ar+ar^2+…+ar^{n-1}) – (ar+ar^2+…+ar^{n}) \\
&= a + (ar-ar) + (ar^2-ar^2) + … + (ar^{n-1}-ar^{n-1}) – ar^n \\
&= a(1-r^n)
\end{align}
$$

上記より、下記のように等比数列の公式が導出できる。
$$
\large
\begin{align}
S-rS &= (1-r)S = a(1-r^n) \\
S &= \frac{a(1-r^n)}{1-r}
\end{align}
$$

$\displaystyle \sum$に関する公式とその導出

$\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k = \frac{1}{2}n(n+1)$

$\displaystyle \sum$は数列の和を表すので、$\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k = 1+2+…+n$のように考えればよい。また、要素の和の形式で表すことで初項$1$、公差$1$の等差数列であることも確認できる。これより、$\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k$は下記のように計算できる。
$$
\large
\begin{align}
\sum_{k=1}^{n} k &= 1 + 2 + … + n \\
&= \frac{1+n}{2} \times n \\
&= \frac{1}{2}n(n+1)
\end{align}
$$

上記は$\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k = \frac{1}{2}n(n+1)$が成立することを示す。

$\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^2 = \frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)$

二項定理より、$(k+1)^3=k^3+3k^2+3k+1$が成立することを元に、$\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^2 = \frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)$の導出を行う。

まず$(k+1)^3=k^3+3k^2+3k+1$は下記のように変形することができる。
$$
\large
\begin{align}
(k+1)^3 &= k^3 + 3k^2 + 3k + 1 \\
(k+1)^3 – k^3 &= 3k^2 + 3k + 1
\end{align}
$$

上記は任意の$k$に関して成立するので、$k=1$から$k=n$の和を計算しても同様に成立する。
$$
\large
\begin{align}
\sum_{i=1}^{n} ((k+1)^3 – k^3) &= \sum_{i=1}^{n} (3k^2 + 3k + 1) \\
(n+1)^3 – 1 &= \sum_{i=1}^{n} (3k^2 + 3k + 1) \\
3 \sum_{i=1}^{n} k^2 &= (n^3+3n^2+3n+1-1) – \sum_{i=1}^{n} (3k + 1) \\
&= n(n^2+3n+3) – \frac{3n(n+1)}{2} – n \\
&= \frac{n}{2}(2(n^2+3n+3) – (3n+3) – 2) \\
&= \frac{n}{2}(2n^2+3n+1) \\
&= \frac{1}{2}n(n+1)(2n+1)
\end{align}
$$

上記より下記の公式が成立することが示せる。
$$
\large
\begin{align}
3 \sum_{i=1}^{n} k^2 &= \frac{1}{2}n(n+1)(2n+1) \\
\sum_{i=1}^{n} k^2 &= \frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)
\end{align}
$$

$\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^3 = \left[ \frac{1}{2}n(n+1) \right]^3$

二項定理より、$(k+1)^4=k^4+4k^3+6k^2+4k+1$が成立することを元に、$\displaystyle \sum_{k=1}^{n} k^3 = \left[ \frac{1}{2}n(n+1) \right]^3$の導出を行う。

まず$(k+1)^4=k^4+4k^3+6k^2+4k+1$は下記のように変形することができる。
$$
\large
\begin{align}
(k+1)^4 &= k^4 + 4k^3 + 6k^2 + 4k + 1 \\
(k+1)^4 – k^4 &= 4k^3 + 6k^2 + 4k + 1
\end{align}
$$

上記は任意の$k$に関して成立するので、$k=1$から$k=n$の和を計算しても同様に成立する。
$$
\large
\begin{align}
\sum_{i=1}^{n} ((k+1)^4 – k^4) &= \sum_{i=1}^{n} (4k^3 + 6k^2 + 4k + 1) \\
(n+1)^4 – 1 &= \sum_{i=1}^{n} (4k^3 + 6k^2 + 4k + 1) \\
4 \sum_{i=1}^{n} k^3 &= (n^4+4n^3+6n^2+4n+1-1) – \sum_{i=1}^{n} (6k^2 + 4k + 1) \\
&= n(n^3+4n^2+6n+4) – n(n+1)(2n+1) – 2n(n+1) – n \\
&= n((n^3+4n^2+6n+4) – (n+1)(2n+1) – 2(n+1) – 1) \\
&= n(n^3 + (4-2)n^2 + (6-3-2)n 4-1-2-1) \\
&= n(n^3 + 2n^2 + n) \\
&= n^2(n+1)^2
\end{align}
$$

上記より下記の公式が成立することが示せる。
$$
\large
\begin{align}
4 \sum_{i=1}^{n} k^3 &= n^2(n+1)^2 \\
\sum_{i=1}^{n} k^3 &= \left[ \frac{1}{2}n(n+1) \right]^3
\end{align}
$$

参考

・スピアマンの順位相関係数の導出
https://www.hello-statisticians.com/explain-terms-cat/spearman_coef1.html

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