収束半径(radius of convergence)は多項式の形式で表されるべき級数に対して、級数が収束する際の$|x|$の取りうる値の上限を表す概念です。当記事では収束半径の定義を確認したのちに、具体的な理解ができるように具体例を取り扱いました。
作成にあたっては「チャート式シリーズ 大学教養 微分積分」の第$8$章「級数」を主に参考にしました。
・数学まとめ
https://www.hello-statisticians.com/math_basic
収束半径の概要
収束半径の定義
$$
\large
\begin{align}
\sum_{n=0}^{\infty} a_n x^{n}
\end{align}
$$
上記の整級数が$x=u$で収束するときの$|u|$の上限を収束半径$r$と定める。整級数が収束するときの$x$の定義域と考えると直感的には理解しやすい。統計学では収束半径をモーメント母関数と合わせて抑えておくと良い。
収束半径の計算
次節で取り扱う「チャート式シリーズ 大学教養 線形代数」の基本例題$154$のように、コーシーの収束判定やダランベールの収束判定から収束半径の計算を行える。
収束半径の使用例
以下、「チャート式シリーズ 大学教養 線形代数」の例題の確認を行う。
基本例題$154$
$$
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\begin{align}
\sum_{n=0}^{\infty} a_n x^{n}
\end{align}
$$
上記の整級数の収束半径を$r$とおく。
・$(1)$
極限値$\displaystyle l = \lim_{n \to \infty} {}^{n} \sqrt{|a_{n}|}$が存在するとき、任意の実数$x$に対して下記が成立する。
$$
\large
\begin{align}
\lim_{n \to \infty} {}^{n} \sqrt{|a_{n} x^{n}|} &= \lim_{n \to \infty} {}^{n} \sqrt{|a_{n}|}|x| \\
&= l |x|
\end{align}
$$
上記に対してコーシーの収束判定を用いると、$l|x|<1$の時級数は収束し、$l|x|>1$の時級数は発散する。すなわち、$\displaystyle |x| < \frac{1}{l}$のとき級数は収束するので、$|x|$の上限である収束半径$r$は下記のように表される。
$$
\large
\begin{align}
r = \frac{1}{l}
\end{align}
$$
・$(2)$
極限値$\displaystyle l = \left| \frac{a_{n+1}}{a_{n}} \right|$が存在するとき、任意の実数$x$に対して下記が成立する。
$$
\large
\begin{align}
\lim_{n \to \infty} \left| \frac{a_{n+1} x^{n+1}}{a_{n} x^{n}} \right| &= \lim_{n \to \infty} \left| \frac{a_{n+1}}{a_{n}} \right| |x| \\
&= l |x|
\end{align}
$$
上記に対してダランベールの収束判定を用いると、$l|x|<1$の時級数は収束し、$l|x|>1$の時級数は発散する。すなわち、$\displaystyle |x| < \frac{1}{l}$のとき級数は収束するので、$|x|$の上限である収束半径$r$は下記のように表される。
$$
\large
\begin{align}
r = \frac{1}{l}
\end{align}
$$
基本例題$155$
・$(1)$
$$
\large
\begin{align}
\sum_{n=0}^{\infty} a_n x^{n} = \sum_{n=0}^{\infty} x^{n}
\end{align}
$$
上記の整級数に対して$\displaystyle l = \lim_{n \to \infty} {}^{n} \sqrt{|a_{n}|}$とおくと、$l=1$である。よって収束半径は$r=1/l=1$である。
・$(2)$
$$
\large
\begin{align}
\sum_{n=0}^{\infty} a_n x^{n} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{x^{n}}{n^{p}}
\end{align}
$$
上記の整級数に対して$\displaystyle l = \lim_{n \to \infty} \left| \frac{a_{n+1}}{a_{n}} \right|$とおくと、$l$は下記のように計算できる。
$$
\large
\begin{align}
l &= \lim_{n \to \infty} \left| \frac{a_{n+1}}{a_{n}} \right| \\
&= \lim_{n \to \infty} \left| \frac{n^{p}}{(n+1)^{p}} \right| \\
&= \lim_{n \to \infty} \left| \frac{1}{(1+1/n)^{p}} \right| = 1
\end{align}
$$
よって収束半径は$\displaystyle r = \frac{1}{l} = 1$である。
・$(3)$
$$
\large
\begin{align}
\sum_{n=0}^{\infty} a_n x^{n} = \sum_{n=0}^{\infty} m^{n} x^{n}
\end{align}
$$
上記の整級数に対して$\displaystyle l = \lim_{n \to \infty} \left| \frac{a_{n+1}}{a_{n}} \right|$とおくと、$l$は下記のように計算できる。
$$
\large
\begin{align}
l &= \lim_{n \to \infty} \left| \frac{a_{n+1}}{a_{n}} \right| \\
&= \lim_{n \to \infty} \left| \frac{m^{n+1}}{m^{n}} \right| \\
&= m
\end{align}
$$
よって収束半径は$\displaystyle r = \frac{1}{l} = \frac{1}{m}$である。
[…] ・参考収束半径ダランベールの収束判定法 […]