確率分布に関連する計算において抑えておきたい公式とその証明(マクローリン展開)

確率分布の確率母関数や期待値の計算などの計算にあたって、マクローリン展開の級数から関数への変形を用いることが多い。関数から級数へのマクローリン展開は微分の値に基づいて計算すれば良いが、級数から関数への変換はある程度知っていないと難しい。そのため、確率分布関連の計算にあたって知っておくと良いマクローリン展開について下記にまとめる。

基本式

マクローリン展開の式

$$
\large
\begin{align}
f(x) &= \sum_{n=0}^{\infty} a_{n} x^n \\
a_{n} &= \frac{f^{(n)}(0)}{n!}
\end{align}
$$

導出にあたっては$\displaystyle f(x)=\sum_{n=0}^{\infty} a_n x^n$とおいた際に、$f^{(n)}(x)$($f^{(n)}$は$f(x)$の$n$階微分を表すとする)を計算し、$f^{n}(0)$と$a_n$の関係式を変形することで$\displaystyle a_{n}=\frac{f^{(n)}(0)}{n!}$を導出できる。
(多項式$\displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} a_n x^n$において$x=0$を代入すると$0$次以外の項は全て消えることを利用する。)

参考:テイラー展開の式

テイラー展開の式も合わせて抑えておくと良いので、テイラー展開の式についても確認する。
$$
\large
\begin{align}
f(x) &=\sum_{n=0}^{\infty} a_{n} (x-a)^n \\
a_{n} &=\frac{f^{(n)}(a)}{n!}
\end{align}
$$

テイラー展開は$x=a$を中心とする関数の級数展開である。マクローリン展開はこのテイラー展開を考える際の$a=0$の場合であると解釈すると良い。

公式リスト

$$
\begin{align}
&e^{x} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{x^n}{n!} &(1) \\
&\sin{x} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^n x^(2n+1)}{(2n+1)!} &(2) \\
&\cos{x} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^n x^{2n}}{(2n)!} &(3) \\
&\frac{1}{1-x} = \sum_{n=0}^{\infty} x^n &(4) \\
&\frac{1}{(1-x)^2} = \sum_{n=1}^{\infty} nx^{n-1} &(5) \\
&\log{(1+x)} = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-1)^{n+1}}{n}x^n &(6) \\
&\log{(1-x)} = -\sum_{n=1}^{\infty} \frac{x^n}{n} &(7) \\
\end{align}
$$

導出

(1) $\displaystyle e^{x} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{x^n}{n!}$

$(e^{x})’=e^x$、$(e^{x})^{”}=e^x$、$f^{(3)}(x)=e^x$…より、$f(x)=e^x$とした際に$f^{(n)}(x)=e^x$が成立する。このことより、$f^{(n)}(0)=e^0=1$が成立するため、これより下記が導出できる。
$$
\large
\begin{align}
e^{x} = \sum_{n=0}^\infty \frac{x^n}{n!}
\end{align}
$$

活用例

ポアソン分布の定義域での積分の計算、ポアソン分布の確率母関数の計算

(2) $\displaystyle \sin{x} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^n x^{(2n+1)}}{(2n+1)!}$

$f(x)=\sin{x}$とすると、$f'(x)=\cos{x}$、$f^{”}(x)=-\sin{x}$、$f^{(3)}(x)=-\cos{x}$、$f^{(4)}(x)=\sin{x}$、..(以下繰り返し)…のようになる。この時、$\sin{0}=0$と$\cos{0}=1$が成立するため、下記が導出できる。
$$
\large
\begin{align}
\sin{x} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^n x^{(2n+1)}}{(2n+1)!}
\end{align}
$$

(3) $\displaystyle \cos{x} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^n x^{2n}}{(2n)!}$

$f(x)=\cos{x}$とすると、$f'(x)=-\sin{x}$、$f^{”}(x)=-\cos{x}$、$f^{(3)}(x)=\sin{x}$、$f^{(4)}(x)=\cos{x}$、..(以下繰り返し)…のようになる。この時、$\sin{0}=0$と$\cos{0}=1$が成立するため、下記が導出できる。
$$
\large
\begin{align}
\cos{x} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^n x^{2n}}{(2n)!}
\end{align}
$$

(4) $\displaystyle \frac{1}{1-x} = \sum_{n=0}^{\infty} x^n$

$\displaystyle f(x)=\frac{1}{1-x}$とすると、$\displaystyle f'(x)=\frac{1!}{(1-x)^2}$、$\displaystyle f^{”}(x)=\frac{2!}{(1-x)^2}$、$\displaystyle f^{(3)}(x)=\frac{3!}{(1-x)^3}$…のようになる。この時、$\displaystyle f^{(n)}(0)=n!$が成立するため、下記が導出できる。
$$
\large
\begin{align}
\frac{1}{1-x} = \sum_{n=0}^{\infty} x^n
\end{align}
$$

(5) $\displaystyle \frac{1}{(1-x)^2} = \sum_{n=1}^{\infty} nx^{n-1}$

$\displaystyle \frac{1}{1-x} = \sum_{n=0}^{\infty} x^n$の両辺を微分することによって導出できる。

活用例

指数分布の期待値の計算

(6) $\displaystyle \log{(1+x)} = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-1)^{n+1}}{n}x^n$

$f(x)=\log{(1+x)}$とすると、$\displaystyle f'(x)=\frac{(1-1)!}{(1+x)}$、$\displaystyle f^{”}(x)=-\frac{(2-1)!}{(1+x)}$、$\displaystyle f^{(3)}(x)=\frac{(3-1)!}{(1+x)^2}$…のようになる。この時、$n \geq 1$で$f^{(n)}(0)=(-1)^{n+1}(n-1)!$が成立するため、下記が導出できる。
$$
\large
\begin{align}
\log{(1+x)} = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-1)^{n+1}}{n}x^n
\end{align}
$$

(7) $\displaystyle \log{(1-x)} = -\sum_{n=1}^{\infty} \frac{x^n}{n}$

$f(x)=\log{(1-x)}$とすると、$\displaystyle f'(x)=-\frac{(1-0)!}{(1-x)}$、$\displaystyle f^{”}(x)=-\frac{(2-1)!}{(1-x)}$、$\displaystyle f^{(3)}(x)=-\frac{(3-1)!}{(1-x)^2}$…のようになる。この時、$n \geq 1$で$f^{(n)}(0)=-(n-1)!$が成立するため、下記が導出できる。
$$
\large
\begin{align}
\log{(1-x)} = -\sum_{n=1}^{\infty} \frac{x^n}{n}
\end{align}
$$

「確率分布に関連する計算において抑えておきたい公式とその証明(マクローリン展開)」への3件のフィードバック

  1. […] 次に幾何分布の期待値E[X]と分散V[X]について考える。・期待値$$begin{align}E[X] &= sum_{x=1}^{infty} xP(X=x) \&= sum_{x=1}^{infty} xp(1-p)^{x-1} \&= p sum_{x=1}^{infty} x(1-p)^{x-1} \&= p frac{1}{(1-(1-p))^2} \&= p frac{1}{p^2} \&= frac{1}{p}end{align}$$http://www.hello-statisticians.com/explain-terms-cat/maclaurin-seriese.htmlの(5)を用いて途中計算を行った。 […]

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