2.6 モーメントの概要と式表記 〜統計検定2級対応・統計学入門まとめ〜

当まとめでは統計検定$2$級の公式テキストの副教材に用いることができるように、統計学入門に関して取り扱います。当記事では「統計検定$2$級対応 統計学基礎」の$2.6$節「モーメント」の内容を元に統計学におけるモーメントの概要と表記に関して取りまとめました。
統計検定$2$級のテキストとの対応がわかりやすいように、目次を「統計検定$2$級対応 統計学基礎」と対応させました。学びやすさの観点からあえて目次を対応させましたが、当まとめは「統計の森」オリジナルのコンテンツであり、統計検定の公式とは一切関係ないことにご注意ください。

・統計検定$2$級対応・統計学入門まとめ
https://www.hello-statisticians.com/stat_basic

モーメントの概要

モーメントの概要

モーメント(moment)は平均や分散を一般化した概念であり、物理で出てくるモーメントのように「ある点を中心に考える何らかの指標」であるとざっくり理解すると良いです。たとえば「平均」は「原点を中心とする値」、「分散」は「平均を中心とする値」であると解釈できます。

「モーメント」は「積率」と表されることもあり、「モーメント母関数」を学ぶ際などに「モーメント母関数」と「積率母関数」が同一であることを抑えておくとスムーズです。

モーメントの式表記

統計学におけるモーメントの式表記を理解する際は「原点が中心のモーメント」と「平均が中心のモーメント」を分けて考えると良いです。まず基本的なモーメントである平均を下記のように定義します。
$$
\large
\begin{align}
\mu_1 \equiv E[X]
\end{align}
$$

平均は確率変数$X$の期待値であり、$E[X]$が対応します。上記では$\mu_1=E[X]$のように表しました。平均は原点が中心のモーメントですが、同様に$X^k$の原点を中心とするモーメントを下記のように定めます。
$$
\large
\begin{align}
\mu_k \equiv E[X^k]
\end{align}
$$

同様に$k$次の平均$\mu_1=E[X]$を中心とするモーメントを下記のように定めます。
$$
\large
\begin{align}
\mu_{k}’ \equiv E[(X-E[X])^k] = E[(X-\mu_1)^k]
\end{align}
$$

上記に基づいて分散$V[X]$を$V[X]=\mu_{2}’$のように表すことができます。

下記のまとめの表記と統一するにあたって、当項で用いた$\mu_k$と$\mu_{k}’$は「統計検定$2$級対応 統計学基礎」と逆に定義を行いました。

平均・分散・歪度・尖度

平均・分散・歪度・尖度はそれぞれ$1$〜$4$次のモーメントを元に定義される指標で、分布の特徴に対応する指標です。平均・分散・歪度・尖度を$E[X], V[X], S[X], K[X]$とおくと、$V[X], S[X], K[X]$はそれぞれ下記のように定義されます。
$$
\large
\begin{align}
V[X] &= E[(X-E[X])^2] \\
S[X] &= \frac{E[(X-E[X])^3]}{V[X]^{\frac{3}{2}}} \\
K[X] &= \frac{E[(X-E[X])^4]}{V[X]^{2}} – 3
\end{align}
$$

歪度の$S[X]$と尖度の$K[X]$は一般的に用いられる定義ではありませんが、$E[X], V[X]$と同様に表すにあたって歪度(skewness)、尖度(kurtosis)の頭文字を用いました。

具体的な確率分布とモーメント

正規分布

指数分布