幾何分布を理解するにあたって、初期のドラゴンクエストのようなRPGのエンカウントの調整の観点から確認することもできます。当記事では、初期のドラゴンクエストのエンカウントの設定とゲームの操作性について幾何分布の確率分布を考えることで考察を行います。
・ゲーム × 統計 まとめ
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前提の確認
エンカウントの仕組み
近年の$3$D化されたRPGではモンスターなどがフィールド上を動き回るシンボルエンカウントが増えましたが、従来の$2$Dのゲームではフィールドを動き回る際に予め設定された仕組みでエンカウントするようにプログラムされる場合が主流でした。
中でもファミコンの黎明期などは$1$歩ごとに一定の確率でエンカウント判定を行う「ランダムエンカウント」が多く、$0$歩エンカの映像なども探せば見つけることができます。
ファミコンのゲーム自体は旧世代のものではありますが、ゲームの作成側の視点でエンカウント調整を行うと考えるとなかなか難しく、「ランダムエンカウント」が黎明期に用いられたのは自然であるように考えられます。
一方で、$1$歩ごとに判定を行う「ランダムエンカウント」を用いる場合、次のエンカウントまでの歩数が「幾何分布」に従うことから、次のエンカウントまでの歩数のばらつきが大きいなどが問題になります。
以下では幾何分布の確率分布を元に「ランダムエンカウント」を用いた際の「次のエンカウントまでの歩数」がどのくらいばらつくかに関して計算や考察などを行います。
幾何分布
下記などに詳しくまとめました。
ドラゴンクエストにおけるランダムエンカウント
幾何分布の期待値
確率$p$でエンカウントする際に次のエンカウントまでの歩数を確率変数$X$で表すことを考えます。このとき、$X=x$歩でエンカウントする確率関数を$p(x)$とおくと、$p(x)$は下記のように表すことができます。
$$
\large
\begin{align}
p(x) = p(1-p)^{x-1}, \quad x=1,2,\cdots
\end{align}
$$
上記では簡易化にあたって、$0$歩目のエンカウントを考慮しないようにしました。この場合、「次のエンカウントまでの歩数」の期待値$E[X]$は下記のように計算することができます。
$$
\large
\begin{align}
E[X] &= \sum_{x=1}^{\infty} xP(X=x) \\
&= \sum_{x=1}^{\infty} xp(1-p)^{x-1} \\
&= p \sum_{x=1}^{\infty} x(1-p)^{x-1} \\
&= p \left( 1 + 2(1-p)^{2-1} + 3(1-p)^{3-1} \cdots \right) \\
&= p \frac{1}{(1-(1-p))^2} \\
&= p \frac{1}{p^2} \\
&= \frac{1}{p}
\end{align}
$$
よって、$p=0.1$であれば$E[X]=10$であり、エンカウント率を$10$%で設定することで、だいたい次のエンカウントまで$10$歩であろうと直感的には考えることができます。