計量ベクトル空間で内積を元に定義されるノルムが$1$になるようにベクトルの大きさの調整を行うことをベクトルの正規化(normalization)といいます。当記事では計量ベクトル空間におけるベクトルの正規化の流れと計算例について取りまとめました。
作成にあたっては「チャート式シリーズ 大学教養 線形代数」の第$5$章「ベクトル空間」を主に参考にしました。
・数学まとめ
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Contents
計量ベクトル空間におけるベクトルの正規化
計量ベクトル空間とベクトルのノルム
内積$(\mathbf{v}, \mathbf{w})$が定義された$\mathbb{R}$上の実計量ベクトル空間$V$におけるベクトル$\mathbf{v} \in V$のノルム$||\mathbf{v}||$は下記のように定義される。
$$
\large
\begin{align}
||\mathbf{v}|| = \sqrt{(\mathbf{v}, \mathbf{v})}
\end{align}
$$
ベクトルの正規化
実計量ベクトル空間$V$上のベクトル$\mathbf{v} \in V$は$\mathbf{v}$のノルム$||\mathbf{v}||$を用いて下記を計算することで正規化を行うことができる。
$$
\large
\begin{align}
\frac{\mathbf{v}}{||\mathbf{v}||} = \frac{\mathbf{v}}{\sqrt{(\mathbf{v}, \mathbf{v})}}
\end{align}
$$
標準内積
$\mathbb{R}$上の$n$次元ベクトル空間$\mathbb{R}^{n}$上の$2$つのベクトル$\mathbf{v} \in \mathbb{R}^{n}, \, \mathbf{w} \in \mathbb{R}^{n}$を下記のように定義する。
$$
\large
\begin{align}
\mathbf{v} &= \left( \begin{array}{c} v_{1} \\ \vdots \\ v_{n} \end{array} \right) \\
\mathbf{w} &= \left( \begin{array}{c} w_{1} \\ \vdots \\ w_{n} \end{array} \right)
\end{align}
$$
このとき標準内積$(\mathbf{v}, \mathbf{w})$は下記のように定義される。
$$
\large
\begin{align}
(\mathbf{v}, \mathbf{w}) = \mathbf{w}^{\mathrm{T}} \mathbf{v} = v_{1} w_{1} + \cdots v_{n} w_{n}
\end{align}
$$
ベクトルの正規化の計算例
以下、「チャート式シリーズ 大学教養 線形代数」の例題の確認を行う。
基本例題$136$
・$[1]$
$$
\large
\begin{align}
\mathbf{v} = \left( \begin{array}{c} 1 \\ 3 \end{array} \right)
\end{align}
$$
ノルム$||\mathbf{v}||$は下記のように計算できる。
$$
\large
\begin{align}
||\mathbf{v}|| = \sqrt{(\mathbf{v}, \mathbf{v})} = \sqrt{1^2+3^2} = \sqrt{10}
\end{align}
$$
よってベクトル$\mathbf{v}$は下記のように正規化することができる。
$$
\large
\begin{align}
\frac{\mathbf{v}}{||\mathbf{v}||} = \frac{1}{\sqrt{10}} \left( \begin{array}{c} 1 \\ 3 \end{array} \right)
\end{align}
$$
・$[2]$
$$
\large
\begin{align}
\mathbf{v} = \left( \begin{array}{c} 1 \\ -1 \\ 1 \end{array} \right)
\end{align}
$$
ノルム$||\mathbf{v}||$は下記のように計算できる。
$$
\large
\begin{align}
||\mathbf{v}|| = \sqrt{(\mathbf{v}, \mathbf{v})} = \sqrt{1^2+(-1)^2+1^2} = \sqrt{3}
\end{align}
$$
よってベクトル$\mathbf{v}$は下記のように正規化することができる。
$$
\large
\begin{align}
\frac{\mathbf{v}}{||\mathbf{v}||} = \frac{1}{\sqrt{3}} \left( \begin{array}{c} 1 \\ -1 \\ 1 \end{array} \right)
\end{align}
$$
・$[3]$
$$
\large
\begin{align}
\mathbf{v} = \left( \begin{array}{c} 1 \\ 3 \\ 2 \\ 2 \end{array} \right)
\end{align}
$$
ノルム$||\mathbf{v}||$は下記のように計算できる。
$$
\large
\begin{align}
||\mathbf{v}|| = \sqrt{(\mathbf{v}, \mathbf{v})} = \sqrt{1^2+3^2+2^2+2^2} = 3 \sqrt{2}
\end{align}
$$
よってベクトル$\mathbf{v}$は下記のように正規化することができる。
$$
\large
\begin{align}
\frac{\mathbf{v}}{||\mathbf{v}||} = \frac{1}{3 \sqrt{2}} \left( \begin{array}{c} 1 \\ 3 \\ 2 \\ 2 \end{array} \right)
\end{align}
$$
・$[4]$
$$
\large
\begin{align}
\mathbf{v} = \left( \begin{array}{c} 3 \\ 1 \\ 1 \\ -2 \\ 1 \end{array} \right)
\end{align}
$$
ノルム$||\mathbf{v}||$は下記のように計算できる。
$$
\large
\begin{align}
||\mathbf{v}|| = \sqrt{(\mathbf{v}, \mathbf{v})} = \sqrt{3^2+1^2+1^2+(-2)^2+1^2} = 4
\end{align}
$$
よってベクトル$\mathbf{v}$は下記のように正規化することができる。
$$
\large
\begin{align}
\frac{\mathbf{v}}{||\mathbf{v}||} = \frac{1}{4} \left( \begin{array}{c} 3 \\ 1 \\ 1 \\ -2 \\ 1 \end{array} \right)
\end{align}
$$