正則行列の基本行列(elementary matrix)の積への分解

行基本変形は基本行列(elementary matrix)の積による操作によって表すことができるなど、基本行列は
よく出てくるので抑えておくと良いです。当記事では正則行列(regular matrix)の基本行列(elementary matrix)の積への分解について取り扱いました。
作成にあたっては「チャート式シリーズ 大学教養 線形代数」の第$3$節「行列の構造」を主に参考にしました。

・数学まとめ
https://www.hello-statisticians.com/math_basic

正則行列と基本行列の積

正則行列の定義と判定

逆行列$A^{-1}$を持つ正方行列$A$を正則行列(regular matrix)という。$n$次正方行列$A$について、下記の$[1], [2], [3]$は同値である。
$[1] \,$ $A$が正則行列である
$[2] \,$ $\mathrm{rank}{A} = n$
$[3] \,$ $A$が有限個の基本行列の積に等しい

上記より、$[2]$または$[3]$が成立する行列$A$は正則行列であると判定することができる。

基本変形と標準形

行基本変形を行うことで行列を「簡約階段形」に変形することができる。また、「簡約階段形」に列基本変形を行うことで「標準形」を得ることができる。「簡約階段形」と「標準形」はそれぞれの行列に対し、一意に定まる。

「正則行列(regular matrix)」は$\mathrm{rank}{A} = n$であり、「簡約階段形」は「上三角行列」、「標準形」は「単位行列」にそれぞれ対応する。

正則行列の基本行列の積への分解

「正則行列」に「行基本変形」と「列基本変形」を施して得られる「標準形」は単位行列に一致する。よって、「標準形」を得るにあたって行った「行基本変形」と「列基本変形」に対応する有限個の基本行列の積によって正則行列を表すことができる。

「正則行列」を基本行列の積で表すにあたっては基本行列の逆行列について抑えておく必要がある。下記にそれぞれの公式をまとめた。
$$
\large
\begin{align}
(P_{ij})^{-1} &= P_{ij} \\
(P_{i}(c))^{-1} &= P_{i} \left( \frac{1}{c} \right) \\
P_{ij}(a) &= P_{ij}(-a)
\end{align}
$$

上記の詳しい導出などは下記で取り扱った。

具体例の確認

以下、「チャート式シリーズ 大学教養 線形代数」の例題の確認を行う。

基本例題$020$

・$[1]$
$$
\large
\begin{align}
\left(\begin{array}{cc} 2 & 3 \\ 3 & 4 \end{array} \right)
\end{align}
$$

上記は下記のように「行基本変形」することができる。
$$
\large
\begin{align}
\left(\begin{array}{cc} 2 & 3 \\ 3 & 4 \end{array} \right) & \longrightarrow \left(\begin{array}{cc} 2 & 3 \\ 1 & 1 \end{array} \right) \\
& \longrightarrow \left(\begin{array}{cc} 0 & 1 \\ 1 & 1 \end{array} \right) \\
& \longrightarrow \left(\begin{array}{cc} 1 & 1 \\ 0 & 1 \end{array} \right)
\end{align}
$$

上記の行基本変形は基本行列の積$P_{12}P_{12}(-2)P_{21}(-1)$を左からかけることに対応する。また、$\displaystyle \left(\begin{array}{cc} 1 & 1 \\ 0 & 1 \end{array} \right)$は下記のように「列基本変形」できる。
$$
\large
\begin{align}
\left(\begin{array}{cc} 1 & 1 \\ 0 & 1 \end{array} \right) \longrightarrow \left(\begin{array}{cc} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{array} \right)
\end{align}
$$

上記の列基本変形は基本行列$P_{21}(-1)$を右からかけることに対応する。よって行列$A$について下記が成立する。
$$
\large
\begin{align}
P_{12}P_{12}(-2)P_{21}(-1) A P_{21}(-1) &= I_{2} \\
A &= P_{21}(-1)^{-1} P_{12}(-2)^{-1} P_{12}^{-1} P_{21}(-1)^{-1} \\
&= P_{21}(1) P_{12}(2) P_{12} P_{21}(1)
\end{align}
$$

「チャート式シリーズ 大学教養 線形代数」の解答では$P_{21}(1) P_{12} P_{21}(2) P_{21}(1)$が得られるが、具体的な行列表記で計算すると同じ結果が得られる。同じ「標準形」を得るにあたって、複数の「基本変形」があると解釈しておけば良い。