定義域が実数全体かつ左右対称の確率分布の確率密度関数には基本的には変曲点が存在します。「正規分布のパラメータと確率密度関数の形状の変化」では正規分布の変曲点が分散を表す$\sigma^2$を用いて表しましたが、当記事ではロジスティック分布とコーシー分布の変曲点に関して確認を行います。
Contents
ロジスティック分布の変曲点
ロジスティック分布の確率密度関数
ロジスティック分布の確率密度関数を$f(x)$とおくと、$f(x)$は下記のように表される。
$$
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\begin{align}
f(x) = \frac{\exp(-x)}{(1+\exp(-x))^{2}} \quad (1)
\end{align}
$$
上記は「統計検定$1$級対応テキスト」の$2.2.9$節などで式の記載がある。
$2$階微分の計算と変曲点
以下、$(1)$式の$2$階微分の計算を行う。
$$
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\begin{align}
f'(x) &= \left( \frac{\exp(-x)}{(1+\exp(-x))^{2}} \right)’ \\
&= \frac{-\exp(-x)(1+\exp(-x))^{2} – 2\exp(-x)(1+\exp(-x))(-\exp(-x))}{(1+\exp(-x))^{4}} \\
&= \frac{-\exp(-x)(1+\exp(-x))^{2} + 2\exp(-2x)(1+\exp(-x))}{(1+\exp(-x))^{4}} \\
&= \frac{-\exp(-x)(1+\exp(-x)) + 2\exp(-2x)}{(1+\exp(-x))^{3}} \\
&= \frac{\exp(-2x)-\exp(-x)}{(1+\exp(-x))^{3}}
\end{align}
$$
$$
\begin{align}
& f^{”}(x) = \left( \frac{\exp(-2x)-\exp(-x)}{(1+\exp(-x))^{3}} \right)’ \\
&= \frac{(-2\exp(-2x)+\exp(-x))(1+\exp(-x))^{3} – 3(\exp(-2x)-\exp(-x))(1+\exp(-x))^{2}(-\exp(-x))}{(1+\exp(-x))^{6}} \\
&= \frac{(-2\exp(-2x)+\exp(-x))(1+\exp(-x)) + 3\exp(-x)(\exp(-2x)-\exp(-x))}{(1+\exp(-x))^{4}}
\end{align}
$$
上記に対し、$t = \exp(-x) > 0$で置き換えることを考える。
$$
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\begin{align}
& f^{”}(x) = \left( \frac{\exp(-2x)-\exp(-x)}{(1+\exp(-x))^{3}} \right)’ \\
&= \frac{(-2\exp(-2x)+\exp(-x))(1+\exp(-x)) + 3\exp(-x)(\exp(-2x)-\exp(-x))}{(1+\exp(-x))^{4}} \\
&= \frac{(-2t^2+t)(1+t) + 3t(t^2-t)}{(1+t)^{4}} \\
&= \frac{t(3t^2-3t) – t(2t-1)(t+1)}{(1+t)^{4}} \\
&= \frac{t(3t^2-3t) – t(2t^2+t-1)}{(1+t)^{4}} \\
&= \frac{t(3t^2-3t) – t(2t^2+t-1)}{(1+t)^{4}} \\
&= \frac{t(t^2-4t+1)}{(1+t)^{4}}
\end{align}
$$
上記では$t = \exp(-x) > 0$が成立するので、$f^{”}(x)$の符号変化は$t^2-4t+1$の符号変化だけを確認すれば良いことがわかる。ここで$t^2-4t+1=0$の解は二次方程式の解の公式より下記のように得られる。
$$
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\begin{align}
t^2-4t+1 &= 0 \\
t &= 2 \pm \sqrt{2^2-1} \\
&= 2 \pm \sqrt{3}
\end{align}
$$
上記に対し$t = \exp(-x)$を解くと下記が得られる。
$$
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\begin{align}
t &= \exp(-x) \\
-x &= \ln{t} \\
x &= -\ln{(2 \pm \sqrt{3})}
\end{align}
$$
上記よりロジスティック分布の確率密度関数の変曲点は$x = -\ln{(2 \pm \sqrt{3})}$であることが確認できる。ここで$x = -\ln{(2 \pm \sqrt{3})}$が$x=0$に対し左右対称であることを示す。
$$
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\begin{align}
-\ln{(2 + \sqrt{3})} &= \ln{\frac{1}{2 + \sqrt{3}}} \\
&= \ln{\frac{2-\sqrt{3}}{(2 + \sqrt{3})(2 – \sqrt{3})}} \\
&= \ln{\frac{2-\sqrt{3}}{4-3}} \\
&= \ln{(2-\sqrt{3})} \\
&= -(-\ln{(2-\sqrt{3})})
\end{align}
$$
コーシー分布の変曲点
コーシー分布の確率密度関数
コーシー分布の確率密度関数を$f(x)$とおくと、$f(x)$は下記のように表される。
$$
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\begin{align}
f(x) = \frac{1}{\pi} \cdot \frac{1}{1+x^2} \quad (2)
\end{align}
$$
$2$階微分の計算と変曲点
以下、$(2)$式の$2$階微分の計算を行う。
$$
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\begin{align}
f'(x) &= \frac{1}{\pi} \left( \frac{1}{1+x^2} \right)’ \\
&= \frac{1}{\pi} \cdot \frac{-2x}{(1+x^2)^2}
\end{align}
$$
$$
\large
\begin{align}
f^{”}(x) &= \frac{1}{\pi} \left( \frac{-2x}{(1+x^2)^2} \right)’ \\
&= \frac{1}{\pi} \cdot \frac{-2(1+x^2)^2 + 2x \cdot 2(1+x^2)(2x)}{(1+x^2)^4} \\
&= \frac{1}{\pi} \cdot \frac{-2(1+x^2) + 8x^2}{(1+x^2)^3} \\
&= \frac{1}{\pi} \cdot \frac{6x^2-2}{(1+x^2)^3} \\
&= \frac{1}{\pi} \cdot \frac{6(x+1/\sqrt{3})(x-1/\sqrt{3})}{(1+x^2)^3}
\end{align}
$$
上記より変曲点は$\displaystyle x= \pm \frac{1}{\sqrt{3}}$であることが確認できる。