「統計検定$2$級 公式問題集 CBT対応版」の解答例を取りまとめるにあたって、当記事では「PART.$2$ 分野・項目別 問題・解説」のCategory.$6$「標本分布」の解答例を作成しました。解答例は「統計の森」オリジナルのコンテンツであり、統計検定の公式とは一切関係ないことにご注意ください。
解答例
Q.1
標本比率の確率変数$\hat{p}$に関して$\displaystyle \hat{p} \sim \mathcal{N} \left( p, \frac{p(1-p)}{n} \right)$が成立することから、確率変数$Z$は下記のように表せる。
$$
\large
\begin{align}
Z = \frac{\hat{p}-p}{\sqrt{p(1-p)/n}} \quad (1)
\end{align}
$$
よって、$p$の$95$%区間に関して下記が成立する。
$$
\large
\begin{align}
z_{\alpha=0.975} \leq & Z \leq z_{\alpha=0.025} \\
-1.96 \leq & \frac{\hat{p}-p}{\sqrt{p(1-p)/n}} \leq 1.96 \\
-1.96 \sqrt{\frac{p(1-p)}{n}} \leq & \hat{p}-p \leq 1.96 \sqrt{\frac{p(1-p)}{n}} \\
-1.96 \sqrt{\frac{p(1-p)}{n}} \leq & p-\hat{p} \leq 1.96 \sqrt{\frac{p(1-p)}{n}} \\
\hat{p} – 1.96 \sqrt{\frac{p(1-p)}{n}} \leq & p \leq \hat{p} + 1.96 \sqrt{\frac{p(1-p)}{n}} \quad (2)
\end{align}
$$
$(1), (2)$より③が正解である。
Q.2
標本$(X_1, X_2)$の実現値、$\overline{X}$の値、それぞれの確率は下記のように表せる。
$(X_1,X_2)$の実現値 | $(2,2)$ | $(2,4)$$(4,2)$ | $(2,6)$$(4,4)$$(6,2)$ | $(2,8)$$(4,6)$$(6,4)$$(8,2)$ | $(4,8)$$(6,6)$$(8,4)$ | $(8,6)$$(6,8)$ | $(8,8)$ |
$\overline{X}$の値 | $2.0$ | $3.0$ | $4.0$ | $5.0$ | $6.0$ | $7.0$ | $8.0$ |
確率 | $\displaystyle \frac{1}{16}$ | $\displaystyle \frac{2}{16}$ | $\displaystyle \frac{3}{16}$ | $\displaystyle \frac{4}{16}$ | $\displaystyle \frac{3}{16}$ | $\displaystyle \frac{2}{16}$ | $\displaystyle \frac{1}{16}$ |
上記より中央値$5.0$、最頻値$5.0$であるので③が正しい。
Q.3
$B$の重さの推定量を$\hat{b}$とおくと、$\hat{b}$は下記のように表せる。
$$
\large
\begin{align}
\hat{b} &= \frac{X-Y}{2} \\
&= b + \frac{\varepsilon_{1} – \varepsilon_{2}}{2}
\end{align}
$$
ここで$\varepsilon_{1}, \varepsilon_{2}$がそれぞれ独立であることから$V[\hat{b}]$は下記のように考えることができる。
$$
\large
\begin{align}
V[\hat{b}] &= V \left[ b + \frac{\varepsilon_{1} – \varepsilon_{2}}{2} \right] \\
&= \frac{1}{4} (V[\varepsilon_{1}] + V[\varepsilon_{2}]) \\
&= \frac{1}{4} (\sigma^2 + \sigma^2) = \frac{\sigma^2}{2}
\end{align}
$$
よって正解は③である。
Q.4
Ⅰ. $X \sim \mathcal{N}(0,\sigma_1^2), Y \sim \mathcal{N}(0,\sigma_2^2)$より下記が成立する。
$$
\large
\begin{align}
E[U] &= E[X+Y] = E[X]+E[Y] = 0 \\
E[V] &= E[X-Y] = E[X]-E[Y] = 0
\end{align}
$$
よって、$U$と$V$の平均は等しい。
Ⅱ. 共分散$\mathrm{Cov}(U,V)$は下記のように式変形できる。
$$
\large
\begin{align}
\mathrm{Cov}(U,V) &= E[UV] – E[U]E[V] \\
&= E[(X+Y)(X-Y)] \\
&= E[X^2] – E[Y^2] = \sigma_1^2 – \sigma_2^2
\end{align}
$$
上記が$0$の時のみ$U,V$は互いに独立であるので、$U,V$が独立なのは$\sigma_1^2 = \sigma_2^2$の時に限る。
Ⅲ. $E[U]=E[V]=0, V[U]=V[V]=\sigma_1^2+\sigma_2^2$より、$\sigma_1^2, \sigma_2^2$の値によらず$U$と$V$は同じ分布に従う。
上記より⑤が正解である。
Q.5
母分散未知の場合の母平均の取り扱いであるので、$\displaystyle T = \frac{\overline{X}-\mu}{\sqrt{S^2/9}}$は自由度$8$の$t$分布に従う。また、$P(T \geq 1.86)$に対応する確率は$t$分布の表より$0.05$であることが確認できる。よって③が正解である。
Q.6
$X_1, X_2, X_3$が標準化されていることから、$E[X_1]=E[X_2]=E[X_3]=0, V[X_1]=V[X_2]=V[X_3]=1$が成立する。このとき$X_1$と$Y$の相関係数を$r_{X_1,Y}$とおくと、$r_{X_1,Y}$は下記のように表せる。
$$
\large
\begin{align}
r_{X_1,Y} &= \frac{\mathrm{Cov}(X_1,Y)}{\sqrt{V[X_1]V[Y]}} \\
&= \frac{E[X_1Y]-E[X_1]E[Y]}{\sqrt{V[Y]}} \\
&= \frac{E[X_1Y]}{\sqrt{V[Y]}} \\
&= \frac{E[X_1^2 + X_1X_2 + X_1X_3]}{3 \sqrt{V[Y]}} \\
&= \frac{E[X_1^2] + E[X_1X_2] + E[X_1X_3]}{3 \sqrt{V[Y]}}
\end{align}
$$
ここで$E[X_1]=E[X_2]=E[X_3]=0, V[X_1]=V[X_2]=V[X_3]=1, r_{X_1,X_2}=r_{X_1,X_3}=0.5$より、下記が成立する。
$$
\large
\begin{align}
E[X_1^2] &= V[X_1]+E[X_1]^2 = 1 \\
E[X_1X_2] &= 0.5 \sqrt{V[X_1]V[X_2]} + E[X_1]E[X_2] \\
&= 0.5 \\
E[X_1X_2] &= 0.5 \sqrt{V[X_1]V[X_2]} + E[X_1]E[X_2] \\
&= 0.5 \\
V[Y] &= V \left[ \frac{1}{3}(X_1+X_2+X_3) \right] \\
&= \frac{1}{9} V[X_1+X_2+X_3] \\
&= \frac{1}{9} (3V[X_1] + 6 \mathrm{Cov}(X_1,X_2)) \\
&= \frac{1}{9} (3 + 6 (E[X_1X_2] – E[X_1]E[X_2])) \\
&= \frac{3 + 6 \times 0.5}{9} \\
&= \frac{2}{3}
\end{align}
$$
よって$r_{X_1,Y}$は下記のように計算できる。
$$
\large
\begin{align}
r_{X_1,Y} &= \frac{E[X_1^2] + E[X_1X_2] + E[X_1X_3]}{3 \sqrt{V[Y]}} \\
&= \frac{1+0.5+0.5}{3 \sqrt{2/3}} \\
&= \sqrt{\frac{2}{3}} = 0.816 \cdots
\end{align}
$$
よって⑤が正解である。
Q.7
$E[X]=\mu, V[X]=\sigma^2$のとき、$\sigma^2=V[X]=E[(X-E[X])^2]$に基づいて下記が成立する。
$$
\large
\begin{align}
\sigma^2 &= V[X] = E[(X-E[X])^2] \\
&= E[(X^2 – 2XE[X] + E[X]^2)] \\
&= E[X^2] – E[X]^2 = E[X^2] – \mu^2
\end{align}
$$
上記より、$E[X^2] = \mu^2 + \sigma^2$が成立するので③が正解である。
Q.8
ア)
自由度$5$の$t$分布に従う。
イ)
自由度$(5,1)$の$F$分布に従う。
ウ)
$\displaystyle \frac{1}{\sqrt{\alpha}}=2.571$を解いて$\alpha=0.151 \cdots$が得られる。
上記より⑤が正しい。
参考
・【統計検定$2$級対応】統計学入門まとめ
https://www.hello-statisticians.com/stat_basic