4.4.3 母分散の比の検定 〜統計検定2級対応・統計学入門まとめ〜

当まとめでは統計検定$2$級の公式テキストの副教材に用いることができるように、統計学入門に関して取り扱います。当記事では「統計検定$2$級対応 統計学基礎」の$4.4.3$節「母分散の比の検定」の内容を元に$F$分布を用いた母分散の比の検定の一連の流れについて確認を行います。
統計検定$2$級のテキストとの対応がわかりやすいように、目次を「統計検定$2$級対応 統計学基礎」と対応させました。学びやすさの観点からあえて目次を対応させましたが、当まとめは「統計の森」オリジナルのコンテンツであり、統計検定の公式とは一切関係ないことにご注意ください。

・統計検定$2$級対応・統計学入門まとめ
https://www.hello-statisticians.com/stat_basic

「母分散の比の検定」の概要

概要

発展事項

$F$検定に用いる$F$分布の確率密度関数の導出に関しては下記などで詳しく取り扱いました。

必要な数学

母分散の比の検定

F統計量

母分散$\sigma_x^2$と$\sigma_y^2$の$2$つの母集団に関して、それぞれ$m$個と$n$個の標本の不偏標本分散$\hat{\sigma}_x^2$と$\hat{\sigma}_y^2$を仮定します。このとき下記が成立します。
$$
\large
\begin{align}
\frac{(m-1)\hat{\sigma}_x^{2}}{\sigma_x^{2}} & \sim \chi^{2}(m-1) \\
\frac{(n-1)\hat{\sigma}_y^{2}}{\sigma_y^{2}} & \sim \chi^{2}(n-1)
\end{align}
$$

上記に基づいて$2$つの母集団の母分散の比の統計量$F$を下記のように定義することができます。
$$
\large
\begin{align}
F &= \frac{\frac{(m-1)\hat{\sigma}_x^{2}}{\sigma_x^{2} (m-1)}}{\frac{(n-1)\hat{\sigma}_y^{2}}{\sigma_y^{2} (n-1)}} \\
&= \frac{\hat{\sigma}_x^{2}}{\sigma_x^{2}} \cdot \frac{\sigma_y^{2}}{\hat{\sigma}_y^{2}} \sim F(m-1,n-1)
\end{align}
$$

詳しい導出の流れは下記で取り扱いました。

母分散の比の検定

$F$統計量」の導出より、下記のように$2$つの母集団の母分散の比の統計量$F$を定義することができます。
$$
\large
\begin{align}
F = \frac{\hat{\sigma}_x^{2}}{\sigma_x^{2}} \cdot \frac{\sigma_y^{2}}{\hat{\sigma}_y^{2}} \sim F(m-1,n-1)
\end{align}
$$

ここで上記の統計量に対し、帰無仮説$H_0: \, \sigma_x^2 = \sigma_y^2$を考えると、$F$統計量は下記のように変形できます。
$$
\large
\begin{align}
F &= \frac{\hat{\sigma}_x^{2}}{\sigma_x^{2}} \cdot \frac{\sigma_y^{2}}{\hat{\sigma}_y^{2}} \\
&= \frac{\hat{\sigma}_x^{2}}{\hat{\sigma}_y^{2}} \sim F(m-1,n-1)
\end{align}
$$

上記を元に「母分散の比の検定」を行うことができます。