Ch.10 「確率過程の基礎」の章末問題の解答例 〜自然科学の統計学(東京大学出版会)〜

当記事は「基礎統計学Ⅲ 自然科学の統計学(東京大学出版会)」の読解サポートにあたってChapter.10の「確率過程の基礎」の章末問題の解説について行います。
※ 基本的には書籍の購入者向けの解答例・解説なので、まだ入手されていない方は下記より入手をご検討いただけたらと思います。また、解説はあくまでサイト運営者が独自に作成したものであり、書籍の公式ページではないことにご注意ください。(そのため著者の意図とは異なる解説となる可能性はあります)

章末の演習問題について

問題10.1の解答例

時点$n$で原点に戻るにあたっては、「左右に動く回数が一致する」かつ「上下に動く回数が一致する」状態であれば良い。よって、$n$が奇数のとき、原点に戻る確率は$0$となる。したがって、以下では$n$が偶数のみを考えるにあたって、$n=2m$となるように整数$m$を導入する。また、ここで左右に動く回数をそれぞれ$k$として以下考える。
左右に動く回数の合計は$2k$のため、上下に動く回数の合計は$n-2k=2(m-k)$となる。よって、以下では左右に$k$回ずつ、上下に$m-k$回ずつ動く確率を計算すればよく、これは多項分布(4項分布)を用いることで計算できる。求める確率を$P(X_1=k,Y_1=k,X_2=m-k,Y_2=m-k|p,q,r,s)$とし、以下のような式となる。
$$
\begin{align}
P(X_1=k,Y_1=k, &X_2=m-k,Y_2=m-k|p,q,r,s) \\
&= \sum_{k=0}^{m} \frac{(2m)!}{k!(m-k)!k!(m-k)!} p^k q^{m-k} r^k s^{m-k} \\
&= \sum_{k=0}^{m} \frac{(2m)!}{(k!)^2((m-k)!)^2} (pr)^k (qs)^{m-k}
\end{align}
$$

問題10.2の解答例

$0$に吸収された確率を$r(a)$とすると、10.1.3節の破産確率と同じ考え方により下記が得られる。
$$
\begin{align}
r(a) = \alpha r(a+1) + \gamma r(a) + \beta r(a+1)
\end{align}
$$
上記を$r(a)$についてくくり、両辺を$r(a)$の係数で割る。
$$
\begin{align}
r(a) &= \beta r(a+1) + \gamma r(a) + \alpha r(a-1) \\
(1-\gamma) r(a) &= \beta r(a+1) + \alpha r(a-1) \\
r(a) &= \frac{\beta}{1-\gamma} r(a+1) + \frac{\alpha}{1-\gamma} r(a-1)
\end{align}
$$
上記において、$\alpha+\beta+\gamma=1$より、$1-\gamma=\alpha+\beta$と置き換えることができる。よって、下記のように変形できる。
$$
\begin{align}
r(a) &= \frac{\beta}{\alpha+\beta} r(a+1) + \frac{\alpha}{\alpha+\beta} r(a-1)
\end{align}
$$
上記を書籍の(10.1)式の式を見比べると、$\displaystyle p = \frac{\beta}{\alpha+\beta}$、$\displaystyle q = \frac{\alpha}{\alpha+\beta}$とすれば同様に(10.2)、(10.3)式が導出できる。

問題10.3の解答例

i)
‘普通の’ねずみにはマルコフ性が成立するので、$X_n$の推移確率を$P(X_{n+1}=k|X_n)$($k=1,2,3,4$)と定義する。問題設定より、このとき$P(X_{n+1}=k|X_n)$は下記のように表すことができる。
・正解の箱が判明するまで
$$
\begin{align}
P(X_{n+1} \neq X_n|X_n) &= \frac{1}{3} \\
P(X_{n+1}=X_n|X_n) &= 0
\end{align}
$$
・正解の箱が判明した後
$$
\begin{align}
P(X_{n+1} = X_n|X_n) = 1
\end{align}
$$

ⅱ)
・’愚かな’ねずみ
幾何分布の期待値に一致する。幾何分布の期待値は$\displaystyle \frac{1}{p}$であり、$\displaystyle p=\frac{1}{4}$なので、求める試行回数の期待値は$4$となる。

・’普通の’ねずみ
$$
\begin{align}
E[X] &= 1 \cdot \frac{1}{4} + \sum_{i=2}^{\infty} i \cdot \left(\frac{3}{4}\right) \left(\frac{2}{3}\right)^{i-2} \left(\frac{1}{3}\right) \\
&= \frac{1}{4} + \left(\frac{3}{4}\right) \left(\frac{1}{3}\right) \sum_{i=0}^{\infty} (i+2) \left(\frac{2}{3}\right)^{i} \\
&= \frac{1}{4} + \left(\frac{1}{4}\right) \sum_{i=0}^{\infty} (i+2) \left(\frac{2}{3}\right)^{i}
\end{align}
$$
ここでマクローリン展開を逆に用いることで、$\displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} (n+2) x^n$が$\displaystyle \sum_{n=0}^{\infty} (n+2) x^n = \frac{1}{1-x}+\frac{1}{(1-x)^2}$のように変形できることを利用する。これにより下記が成立する。
$$
\begin{align}
\sum_{i=0}^{\infty} (i+2) \left(\frac{2}{3}\right)^{i} &= \frac{1}{1-2/3}+\frac{1}{(1-2/3)^2} \\
&= 3 + 3^2 \\
&= 12
\end{align}
$$
したがって、期待値$E[X]$は下記のようになる。
$$
\begin{align}
E[X] &= \frac{1}{4} + \left(\frac{1}{4}\right) \sum_{i=0}^{\infty} (i+2) \left(\frac{2}{3}\right)^{i} \\
&= \frac{1}{4} + \frac{1}{4} \cdot 12 \\
&= \frac{13}{4}
\end{align}
$$
($2$回目以降の試行を$p=1/3$の幾何分布と考えて、$E[X]=1/4+3=13/4$を導出しても良い)

・’利口な’ねずみ
$4$回以内に必ず正解を見つけることができるので、期待値の定義に基づいて計算することができる。
$$
\begin{align}
E[X] &= 1 \cdot \frac{1}{4} + 2 \cdot \left(\frac{3}{4}\right) \left(\frac{1}{3}\right) + 3 \cdot \left(\frac{3}{4}\right) \left(\frac{2}{3}\right) \left(\frac{1}{2}\right) + 4 \cdot \left(\frac{3}{4}\right) \left(\frac{2}{3}\right) \left(\frac{1}{2}\right) \\
&= \frac{1+2+3+4}{4} \\
&= \frac{10}{4} \\
&= \frac{5}{2}
\end{align}
$$

問題10.4の解答例

問題10.5の解答例

まとめ

Chapter.10の「確率過程の基礎」の演習について取り扱いました。特にマルコフ性は至る所で出てくるのでマルコフ連鎖などを中心に抑えておくと良いのではと思います。

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