4.2 基本的な仮説検定の構造 〜統計検定2級対応・統計学入門まとめ〜

当まとめでは統計検定$2$級の公式テキストの副教材に用いることができるように、統計学入門に関して取り扱います。当記事では「統計検定$2$級対応 統計学基礎」の$4.2$節「基本的な仮説検定の構造」の内容を元に仮説検定におけるいくつかの重要な観点について確認を行います。
統計検定$2$級のテキストとの対応がわかりやすいように、目次を「統計検定$2$級対応 統計学基礎」と対応させました。学びやすさの観点からあえて目次を対応させましたが、当まとめは「統計の森」オリジナルのコンテンツであり、統計検定の公式とは一切関係ないことにご注意ください。

・統計検定$2$級対応・統計学入門まとめ
https://www.hello-statisticians.com/stat_basic

「基本的な仮説検定の構造」の概要

概要

上記で取り扱った「仮説検定」の基本的な考え方を元に、当記事では「仮説検定」における重要な観点に関して取りまとめを行いました。

必要な数学

推測統計の基盤の「概念の理解」であるので、数学の理解は必要ありませんが、議論が抽象的なので定期的に復習を行うと良いと思います。

仮説検定における重要事項

帰無仮説・対立仮説

「仮説検定」では「母数(パラメータ)」の値を仮定した際に標本の「実測値」が「珍しいかどうか」に基づいて考察を行う考え方です。この際に仮定する「母数」の値を「帰無仮説(null hypothesis)」といいます。

「帰無仮説を元に考えると実測値が有意水準$\alpha$を超えて珍しい結果である」場合に「帰無仮説」を棄却しますが、この際に採択されるのが「対立仮説(alternative hypothesis)」です。

帰無仮説と対立仮説はそれぞれ$H_0$、$H_1$のように表されますが、「仮説検定」の手順では「帰無仮説が正しくない」には統計的な裏付けがある一方で、「帰無仮説が正しい」には統計的な裏付けがありません。よって、実用的に「仮説検定」を行う際には「帰無仮説が正しくない」を「主張」できるように論理展開を行うことが多いです。たとえば「新薬の効果があるか」については「効果がない」を帰無仮説$H_0$に設定し、仮説検定を行うなどがこの例にあげられます。

片側対立仮説と両側対立仮説

前項で確認した「対立仮説」の設定にあたっては、主に$2$つの設定方法があります。たとえばテストの点数を元に評価を行う場合、「上回る場合」と「下回る場合」の両側について考慮する必要があります。この際は帰無仮説$H_0 \, \mu=80$に対し、対立仮説$H_1 \, \mu \neq 80$を考えます。

一方で、「新薬の効果」のように「現状の改善」が前提にある場合は「片側」への数値の移動のみを考慮します。この際は帰無仮説$H_0 \, \mu=0$に対し、対立仮説を$H_1 \, \mu > 0$のように設定します。

このように対立仮説$H_1$は「片側」のみを考える「片側対立仮説」と「両側」を考える「両側対立仮説」の$2$つの設定方法があります。片側と両側の使い分けに関しては厳密には難しいので、ある程度慣用的に判断するのが良いと思います。

検定統計量と棄却域

「仮説検定」では「母集団」から得られる「標本」に基づいて計算される「統計量」の値に基づいて考察を行います。
$$
\large
\begin{align}
\overline{X} &= \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} X_i \\
\hat{p} &= \frac{X}{n}
\end{align}
$$

上記のように定義される標本平均$\overline{X}$や標本比率$\hat{p}$のように、「仮説検定」に用いられる「統計量」を「検定統計量(test statistic)」といいます。「仮説検定」では「母数(パラメータ)」の値を仮定した際に「検定統計量」の値が「珍しいかどうか」を元に考察を行います。

観測された標本の「実測値」を元に「検定統計量」を計算した際に「有意水準$\alpha$を超えて珍しい結果である」場合は帰無仮説が棄却されます。ここで「帰無仮説」が棄却される範囲を仮説検定の棄却域(rejection region)といいます。

棄却と受容、2種の過誤

母集団の平均に関する仮説

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